10月14日(現地時間)、世界最大のラグジュアリーグループである「LVMHモエ ヘネシー ルイ ヴィトン(LVMH Moët Hennessy Louis Vuitton)」は、2025年第3四半期の決算を発表した。同社はグローバル経済の不透明感が続く中でも、全体収益が前年同期比で1%の有機的成長を記録。地政学的リスクや為替変動の影響を受けながらも、堅調な回復力を示した。
一方で、グループ最大の収益源であるファッション&レザーグッズ部門は依然として苦戦を強いられた。第3四半期の売上は前年同期比2%減の85億ユーロ(約99億ドル)。市場予想(3.5%減、Bloomberg調べ)を上回る結果ではあったが、依然として減速傾向が続いている。
ファッション&レザー事業:減速の中にも創造の躍動
同部門は第1四半期に5%減、第2四半期に9%減を記録しており、今回の結果は下げ幅の鈍化を示している。LVMHは公式リリースで、欧州では観光需要の減少と為替の影響が継続した一方、アジア地域では明確な改善が見られたと報告している。
主力ブランドのルイ ヴィトン(Louis Vuitton)は、ニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquière)とファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)によるコレクションを通して、創造性と職人技の融合を象徴するショーを展開。上海に登場した新拠点「The Louis」は、クルーズ船を模した建築としてメゾンの“旅”の精神を体現し、多くの来場者を集めた。
さらに、メイクアップアーティストパット・マグラス(Pat McGrath)が率いる「La Beauté Louis Vuitton」を新たに発表。革新性とサステナビリティを追求したコスメラインとして高い評価を得た。
クリスチャン ディオール(Christian Dior)では、新クリエイティブ・ディレクターのジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)が初のウィメンズ&メンズコレクションを披露。現代的な“ニュー・ルック”を提示し、ニューヨークとビバリーヒルズに新たな「House of Dior」をオープンした。
またフェンディ(Fendi)では、長年ブランドを支えたシルヴィア・フェンディ(Silvia Venturini Fendi)が名誉会長に就任し、マリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)がチーフ・クリエイティブ・オフィサーに就任。ローマ発メゾンとしての原点に立ち返る新たな章を迎えている。
化粧品・ジュエリー・リテール分野の堅調な推移
パルファン&コスメティクス部門では、ミス ディオール エッセンス(Miss Dior Essence)やディオール オム パルファン(Dior Homme Parfum)が成功を収め、「ソヴァージュ(Sauvage)」は世界で最も売れたフレグランスとしての地位を維持。
ゲラン(Guerlain)の「アクア アレゴリア(Aqua Allegoria)」や「ラール・エ・ラ・マティエール(L’Art & La Matière)」の拡充も奏功した。ジバンシィ(Givenchy)は代表作「ランテルディ パルファン(L’Interdit Parfum)」の新フローラルバージョンを発表し、香水ラインを強化した。
ウォッチ&ジュエリー部門は有機的に1%の成長を達成。ティファニー(Tiffany & Co.)はミラノや東京の新店舗が高い来店数を維持し、ブルガリ(Bvlgari)は「セルペンティ」「ポリクロマ」などのジュエリーコレクションが堅調。タグ・ホイヤー(TAG Heuer)はF1との10年契約を背景に、革新的な「カーボンスプリング・オシレーター」を発表した。
セレクティブ・リテーリング部門では、セフォラ(Sephora)がグローバルリーダーとしての地位をさらに強化。新ブランド「ローデ(Rhode)」が記録的な売上を達成した。DFSはマカオと香港での需要回復が進み、ル・ボン・マルシェ(Le Bon Marché)は独自のキュレーションと文化的イベントによって成長を継続している。
ブランド価値の再強化へ
LVMHは声明の中で「不確実な経済・地政学的環境の中でも、グループは引き続き自信を持っており、製品の真正性と品質、小売の卓越性、機動的な組織力に基づき、ブランドの魅力度を継続的に高める戦略を維持していきます」とコメント。
世界的な消費の変動と高級市場の成熟化が進む中でも、LVMHは多様なブランドポートフォリオと強固な財務基盤を武器に、グローバルリーダーとしての立場をさらに強化する構えである。
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