90周年を迎えた「ポーター(PORTER)」がニューヨークで語る”新たな始まり”

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1935年、鞄職人・吉田吉蔵(Kichizo Yoshida)によって誕生した「ポーター(PORTER)」は、今年で創業90周年を迎えた。その節目を祝し、2025年9月3日から7日にかけて、ニューヨーク・ソーホーのスプリングストリートで開催されたブランド初となる単独ポップアップイベント「PORTER 90th BIRTHDAY NYC POP-UP STORE」。

会場には、ブランドを象徴する「TANKER」シリーズをはじめ、最新作の「MONOCHROME」シリーズ、そしてコペンハーゲン発ブランド「セシリー バンセン(Cecilie Bahnsen)」とのコラボレーションアイテムなど、多彩なラインナップが並んだ。中でもひときわ注目を集めたのは、世界初の100%植物由来ナイロンを採用した“ALL NEW TANKER”。環境配慮とクラフトマンシップを見事に融合させたその姿は、ポーターの次なる進化を象徴していた。

1935年の創業以来、“一針入魂”の精神を貫いてきたポーター。今回OSFは、この特別なポップアップの開催に合わせて、ブランド広報担当者への独占インタビューを実施し、90年の節目を迎える想いや今後の新たな展望について話を伺った。

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ニューヨークのポップアップ会場でのディスプレイ

 

Q1. 今回、ニューヨークで初めて単独ポップアップを開催する決断に至った背景をお聞かせください。

コロナ以前から、私たちの日本国内の店舗には、世界各国から多くのお客様が訪れていました。しかし、パンデミックによって人々の移動が制限され、直接バッグを手に取ってもらう機会が失われてしまいました。そんな状況の中で、「コロナが明けたら、自分たちの手でつくったカバンを世界中に届けたい」という強い思いが芽生えたのです。

そして2023年、ブランドの代表作「TANKER」が40周年を迎えるタイミングで、世界初の量産化に成功した100%植物由来ナイロンを採用し、シリーズは新たな姿へと生まれ変わりました。

この“新しいTANKER”を携え、2024年以降はニューヨーク、ベルリン、ロンドン、マカオ、ソウルなど、世界の主要都市でポップアップを展開してきました。これまではDOVER STREET MARKET LONDONなど、既存のショップや百貨店のイベントスペースをお借りして開催してきましたが、会場の制約やレギュレーションの中では、理想とする世界観を十分に表現しきれないこともありました。

「自分たちの理想とする形で商品を表現し、より強い熱量でお客様に伝えていきたい」という思いが一層高まり、その結果として今回初めての単独ポップアップを開催する決断に至りました。

 

Q2 . 創業90周年という大きな節目を迎えるにあたり、ブランドとして最も伝えたいメッセージはどのようなものですか。

創業90周年という大きな節目を迎えるにあたり、私たちはブランドメッセージとして「Every Day is a New Beginning」というキャッチコピーを掲げています。この言葉には、「昨日よりも今日が、今日よりも明日が、より良い一日であってほしい」という願いが込められています。

そして私たち自身もまた、バッグづくりにおいて常に新たな挑戦を重ね、技術や発想を高め続けていこう、という意志を示しています。創業以来90年間、私たちは“メイド・イン・ジャパン”を貫き、時代の変化に合わせて創意工夫を重ねながら数々のバッグを世に送り出してきました。厳しい時代を生き抜いた創業者の精神や積み重ねてきたアイデアを受け継ぎ、次の世代へと繋いでいくことが、私たちの使命であると考えています。

だからこそ、90周年を迎えた今年は、この「Every Day is a New Beginning」というメッセージをお客様にお伝えしていきたいと考えています。

 

Q3.「ALL NEW TANKER」では世界初の100%植物由来ナイロンを採用されていますが、環境配慮と従来のクラフトマンシップをどのように融合させているのでしょうか。

私たちにとって、今回の100%植物由来ナイロンは単なる環境を配慮した新素材ではありません。むしろ、従来“石油由来であることが当たり前”とされてきたナイロンを、植物からつくり出すことに成功した、人類にとって新しい技術の発明だと考えています。

その開発は非常に困難な道のりでした。未知の素材であるがゆえに、量産体制を整えることも簡単ではありませんでしたし、私たちがTANKERで大切にしてきた「強度」「軽さ」「しなやかさ」といった特性を兼ね備えることは、簡単にクリアできるものではありませんでした。しかし、そこにこそ私たちが培ってきた「Made in Japan」の技術とクラフトマンシップを注ぎ込み、新しいナイロンをバッグとして成立させることができたのです。

つまり「環境配慮とクラフツマンシップを融合させた」というよりも、「世界で誰も実現していなかった新素材を、TANKERらしいプロダクトとして世に送り出すことに挑戦した」と言えるかもしれません。私たちのクラフトマンシップとは、伝統的な手仕事を守るだけでなく、常に新しい技術や素材に挑戦し、それを製品として結実させる力だと考えています。

今回のプロジェクトを通じて、TANKERは過去40年の歴史を大切にしながらも、次の時代へ向けて進化し続ける存在であることを示せたのではないかと思います。

ALL NEW TANKER Collection
ALL NEW TANKER Collection

 

Q4. コペンハーゲン発のブランド、セシリー バンセン(Cecilie Bahnsen)とのコラボレーションにはどのような狙いや背景が込められていますか。

コラボレーションにおいて私たちが一貫して大切にしているのは、“プロダクトへの真摯な想い”です。セシリー バンセンは繊細で詩的なデザインが特徴のブランドですが、そこにはプロダクトを通じて世界観を表現する強いこだわりがあります。

私たちもまた、使い手の日常に寄り添いながらも職人技術を活かしたものづくりを続けてきました。お互いの価値観を尊重し合い、それぞれの強みを最大限に引き上げることで、新しい魅力を生み出せると考えました。セシリー バンセンならではの華麗さと、PORTERならではのバッグとしての機能美が掛け合わさった、特別なプロダクトに仕上がりました。

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Porter x Cecilie Bahnsen Collection

 

Q5. ポップアップを終えられ、アメリカ市場での手応えはいかがでしたか。また、今後の展望についてもお聞かせください。

実際に多くのお客様がPORTERのバッグをすでに愛用してくださっており、POP-UP会場に足を運んで直接感想を伝えてくださったり、Instagramを見て来場いただいたりと、ブランドへの関心と期待を強く感じました。現地での反響を肌で感じることができたのは非常に大きな収穫です。アメリカは多様な価値観が交わる市場であり、その中でPORTERがどう受け入れられるかは今後の挑戦においても重要な指標になります。

今回の経験を活かし、今後もニューヨークをはじめとした主要都市で継続的にPOP-UPを開催し、より深く市場を理解しながら展開を広げていきたいと考えています。

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【PORTER 公式情報】

最新コレクションやコラボレーション情報は、公式サイト(yoshidakaban.com)およびブランドの公式Instagramアカウントで随時発信中。

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