エルメス(Hermès)、グレース・ウェールズ・ボナーをメンズウェア新アーティスティック・ディレクターに任命

Wales Bonner

10月21日(現地時間)、フランスのラグジュアリーメゾン、エルメス(Hermès)は、英国人デザイナーのグレース・ウェールズ・ボナー(Grace Wales Bonner)を新たにメンズウェア部門のアーティスティック・ディレクターに任命したことを発表した。これは、37年にわたりエルメスのメンズ部門を率いてきたヴェロニク・ニシャニアン(Véronique Nichanian)の退任発表に続く人事であり、ブランドにとって歴史的転換点となる。

エルメスが見据える“継承と進化”

エルメスのジェネラル・アーティスティック・ディレクターであるピエール=アレクシ・デュマ(Pierre-Alexis Dumas)は声明で次のようにコメント。

「彼女の“現代のファッション、クラフト、カルチャー”に対する視点は、エルメスのメンズスタイルを形づくるうえで大きな力となるだろう。メゾンのヘリテージと“今”への自信ある眼差しを融合させる彼女の姿勢は、エルメスの創造的精神と深く共鳴しています。これは、これから続く対話の始まりに過ぎません」と語った。

また、ウェールズ・ボナーは、この任命について「エルメス メンズ レディ・トゥ・ウェアのクリエイティブ・ディレクターに任命されたことを心から光栄に思います。偉大な職人やデザイナーの系譜を受け継ぎながら、この新しい章を始められることはまさに夢の実現です。ピエール=アレクシ・デュマ氏、アクセル・デュマ氏に、この魔法のようなメゾンで自分のビジョンを表現する機会を与えてくださったことに深く感謝いたします」と述べている。

知性と文化を織り込むデザイン哲学

ウェールズ・ボナーは、2014年にセントラル・セント・マーチンズ(Central Saint Martins)を卒業し、同年の卒業制作「Afrique」でロレアル・プロフェッショナル・タレント・アワードを受賞。その翌年に自身のブランド「ウェールズ ボナー(Wales Bonner)」を立ち上げた。以来、彼女はクラシックなテーラリングを再構築し、アフリカン・ディアスポラの文化的遺産、音楽、文学、アートから着想を得た知的かつ詩的なコレクションで知られる存在となった。

2021年にはCFDA(アメリカファッション協議会)の「インターナショナル・メンズデザイナー・オブ・ザ・イヤー」、2024年には「ブリティッシュ・メンズウェア・デザイナー・オブ・ザ・イヤー」を受賞。また、アディダス(Adidas)との長期的なコラボレーション、ディオール(Dior)やアーティストのケリー・ジェームズ・マーシャル(Kerry James Marshall)との協業、さらにニューヨーク近代美術館(MoMA)の「Artist’s Choice」シリーズのキュレーションなど、ファッションとアートの垣根を越えた活動を展開してきた。

女性デザイナーとしての新たな一歩

2025年は、ラグジュアリーファッション業界において多くの主要ポジションが交代した年である。その多くを男性が占めていた中で、ウェールズ・ボナーのエルメス就任は、長く続いてきたジェンダー構造に小さな変化をもたらす象徴的な出来事となる。

なお、彼女が手がける最初のコレクションは、2027年1月に発表予定。

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