10月22日(現地時間)、フランスのラグジュアリーメゾンのエルメス(Hermès)は、2025年第3四半期の売上を発表した。売上高は39億ユーロで、恒常為替レートで前年同期比10%増(実質5%増)を記録。第2四半期からわずかに加速し、ヨーロッパ、アメリカ、アジアでバランスの取れた成長を示した。
エグゼクティブ・チェアマンのアクセル・デュマ(Axel Dumas)は、「第3四半期も、エルメスは堅実な成長を維持し、当社のモデルの強さを示す結果となりました。お客様のロイヤリティと従業員の献身に支えられ、不確実な環境下でも確かな舵取りを続けています」と声明でコメント。
米国・日本がけん引、中国も回復傾向
地域別では、アメリカ大陸が+13%と力強い伸びを見せた。特に米国市場では、関税による価格上昇にもかかわらず販売が好調で、恒常為替ベースで14.1%増。10月にはテネシー州ナッシュビルに新店舗をオープンし、ブランドの存在感をさらに強化した。
日本市場も+15%と引き続き堅調で、ローカル顧客の支持が継続している。一方、中華圏を含むアジア(日本除く)は+4%と緩やかながらも回復基調を示した。CFOのエリック・デュ・アルグエ(Eric du Halgouët)は、「中華圏では株式市場や不動産価格の安定が追い風となり、特に高価格帯ジュエリーや時計が堅調だった」と説明している。
欧州では、フランス(+9%)およびその他欧州地域(+12%)が堅実な伸びを記録。観光客による購買も好調で、アメリカや中東からの旅行客が売上を押し上げた。
セクター別ではレザーグッズが主軸、プレタポルテも堅調
エルメスの中核事業であるレザーグッズ&サドル部門は、恒常為替ベースで13%増。定番のバーキンやケリーに加え、新作「タブリエ・セリエ(Tablier Sellier)」や「ブサス・トロッティング(Besace Trotting)」が好調だ。さらに、象徴的な「プリュム(Plume)」の復刻も話題を集めている。
プレタポルテ&アクセサリー部門も6%増と堅実な成長を維持。6月にパレ・ディエナで開催されたメンズ2026年春夏コレクション、9月の香港での2025年秋冬コレクション、そして10月の女性向けコレクションが好評を博した。
一方、フレグランス&ビューティ部門は5%減と前年の大型新作「バレニア(Barénia)」発売による高比較基準の影響を受けた。だが、新たに「テール・ドゥ・エルメス オー ド パルファム アンテンス」や「バレニア」の濃香版を発表し、ラインナップを拡充している。
「クラフトへの情熱」を掲げた持続可能な成長戦略
またエルメスは、2025年も「Drawn to Craft(クラフトへの情熱)」を年間テーマに掲げている。9月には、仏シャラント地方のリル・デスパニャックに24番目のレザー工房を開設し、260人の職人を新たに雇用。今後3年間でさらに3つの新工房を開設予定であり、地場雇用と環境配慮の両立を図る。
グレース・ウェールズ・ボナーの就任でメンズウェアに新風
このような第3四半期の堅調な業績に加え、エルメスは今週、メンズウェア部門のアーティスティック・ディレクターにグレース・ウェールズ・ボナー(Grace Wales Bonner)を任命したことを発表した。これは、37年間この部門を率いてきたヴェロニク・ニシャニアン(Véronique Nichanian)の退任に伴うもので、ブランドにとって歴史的な転換点である。
なお、ニシャニアンのラストコレクションは2026年1月、ウェールズ・ボナーの初コレクションは2027年1月に発表予定だ。
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