『米ティーン・ヴォーグ(Teen Vogue)』が Vogue.com へ統合— 編集長ヴァルシャ・シャルマも退任へ

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11月3日(現地時間)、ファッション誌『ヴォーグ(Vogue)』の親会社であるコンデナスト社(Condé Nast)は、若者世代を象徴するデジタルメディア『ティーン・ヴォーグ(Teen Vogue)』を『ヴォーグ・ドットコム(Vogue.com)』へ統合することを発表した。同時に、編集長ヴァルシャ・シャルマ(Versha Sharma)の退任も明らかにされた。今後は、『ヴォーグ』の編集コンテンツ責任者クロエ・マレ(Chloe Malle)が両ブランドを統括する体制となる。

この動きは、10月末に『ヴォーグ・ビジネス(Vogue Business)』が『ヴォーグ・ドットコム』の傘下に加わった発表に続くものであり、コンデナストが進める「ヴォーグ・エコシステム」拡張戦略の一環とみられる。

マレは声明の中で、「この新しい章を迎えることを楽しみにしています。メディア環境がますます分断される中で、『ティーン・ヴォーグ』や『ヴォーグ・ビジネス』を含む“すべてのヴォーグ”を一つの場所でアクセス可能にすることは、私たちの成長の礎になります」とコメント。また「私自身、かつてティーン・ヴォーグを読んで育ち、今でもその感性を愛し、尊敬しています。その独自の視点と精神をこれからも大切にし、支えていくつもりです」と述べた。

政治・社会への眼差しを宿したメディアとしての軌跡

『ティーン・ヴォーグ』は2017年、ヒラリー・クリントンを表紙に掲げた号をもって紙媒体を終了し、以降はデジタル専業メディアとして再出発した。ヴァルシャ・シャルマのリーダーシップのもと、同誌はファッションやカルチャーにとどまらず、政治・社会問題へも積極的に切り込む姿勢を打ち出し、若い世代の声を代弁する存在として確固たる地位を築いてきた。

ゾーラン・マムダニ(Zohran Mamdani)議員のキャンペーン取材、環境活動家グレタ・トゥーンベリ(Greta Thunberg)へのインタビュー、ブラック・ライブズ・マター(Black Lives Matter)運動を通じた社会的考察など、多角的な視点で時代の変化を伝えてきたことが、その象徴である。

ヴォーグ・エコシステムの拡張と、メディアの多様性の行方

今回の『ティーン・ヴォーグ』統合は、コンデナストがヴォーグ・ブランド全体の影響力拡大を図る中での戦略的な動きとなる。一方で、多様な価値観と若者の声を代弁してきたメディアが一つの枠に収められることは、編集独立性の低下として懸念を残す。

ファッションと政治、カルチャーと社会意識を橋渡ししてきた『ティーン・ヴォーグ』は、次世代の読者にとって「声」であり「羅針盤」であった。その精神は、統合後の『ヴォーグ・ドットコム』にどのように受け継がれていくのか、注目が集まる。

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