ニューヨークのアッパーイーストサイドのショッピングカルチャーを長年支えてきた「サックス オフ フィフス(Saks Off 5th)」が、57丁目の旗艦店を2025年12月31日付で閉店する。
同ブランドは、ハイエンドブランドを手に取りやすい価格で提供する“ディスカウント・ラグジュアリー”の代名詞であり、地元住民から観光客まで幅広い層に親しまれてきた。
全米10店舗を対象とした配置転換──重点投資に向けた戦略的判断
今回の閉店は、 業績の優れた店舗や成長が見込まれる市場へ経営資源を再配分するために、ブランド全体の店舗網を再構築する戦略的判断の一環とされている。アッパーイーストサイド店に加え、以下の全米9店舗が2026年初頭より段階的に閉店する。
- テキサス州オースティン
- イリノイ州シカゴ
- ニュージャージー州イーストハノーバー
- ニューヨーク州ナイアガラフォールズ
- ペンシルベニア州ピッツバーグ
- ペンシルベニア州フィラデルフィア(Franklin Mall ほか)
- ペンシルベニア州プリマス・ミーティング
- ワシントンD.C.
- コネチカット州ウェストハートフォード
これらの再編にあたり、同社は次のようにコメント。
「今回の決断が、Saks Off 5th の長期的な成功にとって最善であると確信しています。これからもお客様に最良のサービスを提供し続けることを楽しみにしています。」
また、10月に破産の噂が流れた際には、「リストラクチャリングは検討されていません。未払い金の削減、変革への投資、業績改善に向けて順調に進展しています」と発表した。
サックス フィフス アベニュー本店は“影響なし”
一方で、ミッドタウンに位置する「サックス フィフス アベニュー(Saks Fifth Avenue)」本店は、今回の再編の対象外であり、これまで通り営業を継続する。
1924年の開店以来、同店はマンハッタンの象徴的存在として確固たる地位を築き、ホリデーウィンドウでも知られる名所だ。今回の閉店はアウトレット業態に限定されたもので、本店には影響しない。
チェルシー・ピア・フィットネスが後継テナントに
一方、アッパーイーストサイドの旗艦店が入居するイースト57丁目135番地(135 E. 57th St.)では、ビルオーナーであるTFコーナーストーン(TF Cornerstone)による大規模な再開発が進行中だ。サックス オフ フィフス退去後の区画には、「チェルシー・ピア・フィットネス(Chelsea Piers Fitness)」が約47,000平方フィートで入居することが決定している。同施設は、TFCが手がける他のニューヨーク拠点にも展開しており、今回の開業によりアッパーイーストサイドのウェルネス需要を取り込む狙いである。
なお、同ビルでは350戸規模の住宅へのコンバージョンが計画されており、2026年にかけてエリア全体の再活性化が見込まれている。
“お得に買える名所”の終幕
アウトレットとして愛されてきたサックス オフ フィフス旗艦店の撤退は、ニューヨーカーにとってひとつの時代の終わりを象徴する出来事となる。デザイナーズブランドを手頃に楽しみたい人々にとって、同店は“賢くラグジュアリーを手に入れる”ための欠かせない場所だった。閉店が近づく今、店内では最終セールや商品整理が進んでいる。
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