11月24日(現地時間)、イタリアのラグジュアリーグループ「エルメネジルド・ゼニアグループ(Ermenegildo Zegna Group)」が、2026年1月1日付で経営体制を大きく刷新することを発表した。これは、100年以上続くファミリービジネスの歴史において、次の世代へ向けて舵を切る象徴的なタイミングだ。
今回の発表では、長年グループを率いてきた ジルド・ゼニア(Gildo Zegna)が「グループ エグゼクティブ・チェアマン」に就任し、経営の最前線から一歩引きながらも、グループの理念と価値を守る“最高責任者”としての役割を継続することが明らかになった。ジルドは、グループが擁する「ゼニア(ZEGNA)」、「トム ブラウン(Thom Browne)」、「トム フォード ファッション(TOM FORD FASHION)」という3ブランドの理念を守りながら、テキスタイル部門、法務本部、サステナビリティやIRなどを含む外部関係部門を監督し、グループ全体の長期的価値創出に関与し続ける。
同時に、現グループCFO兼COOのジャンルカ・タリアブエ(Gianluca Tagliabue)が、株主総会での正式承認を前提に、新たにグループCEOへと就任する。タリアブエは過去10年にわたり、ゼニアの経営改革や事業成長の中心を担ってきた人物であり、新体制ではグループ全ブランドの戦略、組織横断での機能強化、そして製造部門の統括を担うこととなる。ブランド各CEOもタリアブエの管轄下に入ることで、ゼニアグループ全体の統合的な運営が一層強化されると見られている。
一方で、今回の改革で最も象徴的と言えるのが、創業家4代目にあたるエドアルド・ゼニア(Edoardo Zegna) と アンジェロ・
エドアルドはこれまでゼニアのマーケティング、デジタル、サステナビリティを横断して統括してきた。今後はブランドイメージやマーケティング戦略、さらにはアーティスティック・ディレクターである アレッサンドロ・サルトリ(Alessandro Sartori) と連携したデザイン領域を担当する。一方のアンジェロは、ゼニアのEMEA地域CEOを務めるほか、グローバルのクライアント戦略を指揮してきた経験を生かし、商品の企画開発からマーチャンダイジング、そして市場横断のコマーシャル戦略まで、ブランドの“ビジネス面の心臓部”を担うことになる。
世代交代についてジルドは、「リーダーの最も重要な責務は、未来を見据え、次世代に力を託すことです。これは私たち家族の価値観に深く根付いた考え方であり、今日の決断はその延長線上にあります」と語り、創業家ならではの長期視点と未来への責任感を強調した。
また、エドアルドとアンジェロについては、それぞれの経験と強みが互いを補完し合う関係にあり、これからのゼニアブランドをより強固に導く“最良のチーム”であると評価している。
ゼニアグループは、自社で一貫して生産工程を管理する“フィリエラ(完全統合型サプライチェーン)”が最大の強みであり、最高品質の素材とクラフツマンシップを支え続けている。同社の2024年の売上高は19.5億ユーロに達し、世界のラグジュアリー市場における存在感は年々増している。
今回の経営体制刷新は、老舗ラグジュアリーブランドが未来を見据えて行う戦略的判断であると同時に、同族経営の新たなフェーズの始まりを示すものだ。ゼニアブランドは今後、デジタル戦略の加速、グローバル市場におけるポジショニングの強化、トム ブラウンやトム フォードとの連携深化など、多方面での変革が進む可能性が高い。
Copyright © 2025 Oui Speak Fashion. All rights reserved.