マッテオ・デ・ローザ(Matteo De Rosa)、LVMHメティエダールのCEO職を退任

Matteo De Rosa

LVMH モエ ヘネシー ルイ ヴィトン(LVMH Moët Hennessy Louis Vuitton)グループは、メティエダール(Métiers d’Art)部門を率いてきたマッテオ・デ・ローザ(Matteo De Rosa)がCEO職を離れたことを明らかにした。デ・ローザのLinkedInによれば、在任期間は 2021年〜2025年11月とされており、実際の退任は2025年10月17日(現地時間)に行われたと見られる。

メティエダールは、ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)のイニシアチブにより2015年に設立された部門で、LVMHグループのクラフツマンシップと原材料調達を一元的に統括する戦略的組織である。レザーや金属、エキゾチックスキンからテキスタイルまで、ラグジュアリー産業の基盤となる素材の供給網を管理し、伝統技術と産業の持続性を守る役割を担っている。

サプライチェーン戦略を再構築した4年間

デ・ローザは2021年にCEOとしてメティエダールに参画し、グループの素材戦略を刷新してきた。レザー、エキゾチックスキン、金属パーツといった主要素材の供給網を横断的に整理し、ブランド間での調達最適化を推進。

LVMH以前のキャリアでは、ドリス ヴァン ノッテン(Dries Van Noten)ベルギー法人の社長、さらにその前にはオーストラリアの高級小売「ケネディ(Kennedy)」でファッション&ライフスタイルディレクターを務め、デザイン・素材・リテールを横断的に理解するエグゼクティブとして国際的に評価されてきた。

細尾との協業

デ・ローザ体制を象徴するメティエダールでの取り組みの一つが、日本の西陣織の老舗・細尾(HOSOO)とのパートナーシップだろう。2023年に正式にパートナーとなった細尾は、400年以上の歴史を持つ京都のテキスタイルメーカーで、その高度な織技術は世界的に知られている。

当時、デ・ローザはこの協業について次のように語った。

「細尾とのこの新たな取り組み、そして彼らが持つシルクの芸術における卓越したノウハウを通じて、私たちは日本固有の職人技との豊かな対話を開きます。これにより、手工芸とテクノロジー、アート、クリエイティビティをつなぎ、メティエ(職人技)のコミュニティにおける地域を超えた協働へとつながっていくのです。」

さらに同協業の成果は、2024年にパリのスペース「La Main」で開催された展示「Ambient Weaving II」にも結実した。細尾、東京大学の景井研究室、そして ZOZO NEXT による共同研究から生まれたテキスタイルは、西陣織の構造にアートやテクノロジーの概念を取り込むことで、色や光のニュアンスに呼応する表情を持つ素材へと進化。2021年に始まった「Ambient Weaving」シリーズを基盤としつつ、西陣織の美を損なうことなく現代的表現を融合させ、次世代の素材表現として注目を集めた。

LVMH

高まる素材戦略の重要性

近年、環境規制の強化や希少素材の供給不安が業界の大きな課題となるなか、メティエダールの役割はより戦略的な重要性を帯びている。だが、そうした状況下で、デ・ローザが取り組んできた原材料調達の最適化やサプライチェーンの強靭化は、グループ内外の関係者から信頼を得ており、素材戦略の基盤づくりに大きく寄与した。

LVMHは声明の中で、デ・ローザの貢献に対して次のように述べている。

「グループは、職人技術というグループのクラフツマンシップ遺産を守り育てるこの戦略的部門の発展とプレゼンス向上に貢献したデ・ローザ氏に感謝します。」

なお、後任については現時点で公表されておらず、グループは近日中の発表を予定している。

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