12月9日(現地時間)、米コンテンポラリーブランド「ヴィンス(Vince)」を展開する「ヴィンス・ホールディング(Vince Holding Corp.)」は、2025年11月1日に終了した第3四半期決算を発表した。同四半期は卸売・直販(以下、DTC)の両チャネルがバランスよく伸び、売上高は前年同期比6.2%増の8,510万ドル と堅調に拡大した。
DTCが牽引し、売上は全方位で成長
売上の伸びを主導したのは、戦略的投資を続けてきた DTCチャネルだ。卸売は 6.7%増、DTCは5.5%増と、両セグメントが揃ってプラス成長を確保。今年に入り、店舗改装、ECサイト刷新、マーケティング投資の強化に加え、オンラインでドロップシップ機能を導入し品揃えを拡張したことが顧客体験を底上げし、DTC成長のドライバーとなった。
CEOのブレンダン・ホフマン(Brendan Hoffman)は次のように語る。
「第3四半期は全チャネルで健全な売上成長を達成し、売上・利益の双方で当初の予想を上回る結果となりました。DTC(直販)事業は、顧客体験の向上に向けて取り組んできたさまざまな施策が功を奏し、幅広い領域で力強さを見せています。」
また、ホリデーシーズン入り後も勢いは継続し、DTCでは過去最高となるホリデーウィークエンド売上を記録した。
さらに、売上だけでなく、収益性も大きく改善した。セグメント合計の営業利益は 1,883.7万ドルから 1,961.1万ドルに増加し、特にDTC部門は前年の約2倍にまで利益が拡大。
- 卸売部門:1,843.4万ドル(前年1,822.3万ドル)
- DTC部門:117.7万ドル(前年61.4万ドル)
このDTCの急伸は、ブランドが進めてきた直販強化策が収益面でも成果を上げ始めたことを示している。
一方、本社機能(マーケティング/デザイン/IT/管理部門など)の費用増が重なり、全社ベースの営業利益は540万ドル(前年576万ドル)とわずかに減少した。
純利益は減少、関税と輸送費の上昇が利益率を圧迫
純利益は270万ドル(1株当たり0.21ドル)と、前年の430万ドルから減少した。その主因となったのが、外部環境の変動によるコスト増だ。なかでも関税負担の上昇(約-260bps) と輸送コストの増加(約-100bps)が利益率を押し下げる結果となった。
しかし、価格改定や原価改善、割引率の抑制など、収益構造の強化に向けた社内改善も着実に進行しており、同社が構造的な利益改善に取り組み続けている姿勢も確認できる。
通期2〜3%成長を予想、関税負担を織り込みつつ堅調に推移へ
2025年第4四半期について同社は、売上が前年同期比 3〜7%増となる見通しを示す。調整後営業利益率は0〜2%、調整後EBITDA率は2〜4%を想定しており、一定の利益水準を維持しながらの成長を見込んでいる。
一方で、第4四半期には4,000万〜5,000万ドル規模の追加関税コストが発生する見通しで、今回の業績予想にはその影響も織り込まれている。
また、2025年度通期については、売上が前年比2〜3%増、調整後営業利益率が2〜3%、調整後EBITDA率が4〜5%と、安定した成長を見込むガイダンスを発表した。
ABGとの長期契約を背景に、ブランド価値最大化へ
2023年にヴィンスは、ブランド管理大手の「オーセンティック・ブランズ・グループ(Authentic Brands Group, ABG)」と戦略的取引を締結し、ヴィンスブランドの知的財産をABGへ譲渡した。同時に、卸売・小売・EC事業については 10年更新可能な長期ライセンス契約を締結し、従来どおり自社での事業運営を継続している。
ABGのグローバルなブランド運営ノウハウを活かしながら、ヴィンスは今後もブランド価値の最大化と持続的成長を目指す方針だ。
Copyright © 2025 Oui Speak Fashion. All rights reserved.