AIで小売廃棄を変革する「スーパーサークル(SuperCircle)」が、2,400万ドルを調達

SuperCircle

テキスタイル廃棄の構造的な問題に対し、“廃棄物をコストセンターからキャッシュジェネレーターへ”と転換するスタートアップが存在感を高めている。12月11日(現地時間)、スーパーサークル(SuperCircle)は、ファウンドリー(Foundry) がリードし、BBGベンチャーズ(BBG Ventures)、リニューアル・ファンド(Renewal Fund)、エレメンタル・インパクト(Elemental Impact) などが参加するシリーズAラウンドで 2,400万ドルを調達したと発表した。

スーパーサークルは、グローバル小売企業向けのフルスタック型テキスタイル廃棄管理プラットフォームを提供する企業だ。小売チェーンの返品、破損品、売れ残り在庫、製造端材、さらには消費者のトレードイン品まで、あらゆる“エンド・オブ・ライフ(使用後〜廃棄段階)”を一元管理し、利益性とサステナビリティの両面から最適化する“廃棄オペレーティングシステム”を標榜している。

同社はすでに ジェイクルー(J.Crew)、ゲス(GUESS)、リフォーメーション(Reformation)、フィグス(FIGS)、パラシュートホーム(Parachute Home) などを含む 75以上のブランドと提携。全米およびカナダで、店舗網やディストリビューションセンターを巻き込んだサプライチェーン上の廃棄物処理と、全国規模のカスタマートレードインプログラムを運用している。

年間1,630億ドル相当の“埋もれた価値”に挑む

現在世界では、年間約1,630億ドル相当の売れ残り在庫が廃棄されているといわれる。米国の小売企業は、返品、処理コスト、損傷品、販売不能在庫などで巨額の損失を被っており、その一方でテキスタイルの85%以上が埋立地や焼却炉行きとなっている。

スーパーサークルは、この“見えない損失”を可視化し、価値に変換するための デジタルオペレーティングレイヤーを提供する。さらに、ブランドに製品のエンド・オブ・ライフ処理責任を求める拡大生産者責任(EPR)規制にも対応できるよう設計されており、規制順守と収益化を同時に支えるインフラとしての役割も担う。

50以上のデータポイントから“デジタルツイン”を生成

中でも、スーパーサークルの強みは、AI搭載の独自ソートエンジンだ。同社は、回収された各テキスタイルに対して50以上の属性データを取り込み、“デジタルツイン”を生成。それをもとに、AIが「最も利益性が高く、かつ環境負荷の少ない次の行き先」を自動で判定し、50以上のリユース&リサイクルストリームの中から最適なルートに振り分ける。

これには、売れ残りや過剰在庫をはじめ、返品や損傷品、生産過程で発生する端材・スクラップ、さらにアパレル、フットウェア、アクセサリー、ホーム&ヘルステキスタイルなど、消費者からのトレードイン品までが含まれる。

こうした仕組みにより、小売企業は廃棄物処理コストや在庫評価損を削減 しながら、再販やリサイクルを通じた新たな収益源を開拓できるようになる。また、収集されたデータは継続的に蓄積され、ソートエンジンの精度とインパクトが時間とともに強化されていく構造だ。

SuperCircle series A
SuperCircle Raises $24M Series A to Scale Retail’s Waste Management Operating System

「すべてのTシャツ、スニーカー、シーツ、バッグに“次の人生”を」

スーパーサークルのCEO兼共同創業者 クロエ・ソンガー(Chloe Songer) は、自身のサプライチェーン領域での経験をこう振り返る。

「かつて大手小売のサプライチェーンの現場にいた頃、年間を通じて膨大なプロダクトが廃棄され、ほとんど価値が回収されていない状況を目の当たりにしました。よりよいエンド・オブ・ライフの選択肢が存在しないために、多くの製品が“二束三文”で処理されていたのです。」

そのうえで、同社の役割を次のように語る。

「スーパーサークルが提供しているのは、小売企業がスケール可能かつ財務的に健全なかたちでエンド・オブ・ライフに向き合うためのシステムです。消費者のトレードインを通じて購入後もテキスタイルから価値を生み出し続けると同時に、過剰在庫や損傷品、返品によるサプライチェーン上の損失を劇的に減らしていきます。あらゆるTシャツ、スニーカー、シーツ、ハンドバッグが“生産後も最大限の価値を生み続ける”状態を目指しています。」

投資家が見る「廃棄インフラの新しいスタンダード」

今回のシリーズA資金は、以下の領域に重点的に投下される予定だ。

  • テクノロジー開発の加速
  • サプライチェーン統合の拡大
  • 物流・処理拠点およびリバースロジスティクス網の拡充
  • 規制対応のためのデータアーキテクチャ強化(コンプライアンスレポートの効率化)
  • エンタープライズ小売企業のオンボーディング体制の拡大

投資家も、廃棄インフラの転換点として同社のポテンシャルに注目している。BBGベンチャーズのマネージングパートナー ニシャ・ドゥア(Nisha Dua) は、スーパーサークルを次のように評価する。

「いま小売業界に必要なのは、“廃棄にまつわる損失”をひっくり返し、コストセンターを収益源へと変えるターンキー型のシステムです。スーパーサークルは、これまで断片的なソリューションにとどまっていた領域に対し、業界全体がスケールで移行できるデジタルインフラを構築しました。」

ファウンドリーのパートナー ジャクリーン・ヘスター(Jaclyn Hester) も、エンド・オブ・ライフ領域における同社の可視化能力を強調する。

「スーパーサークルは、従来は不透明で低い価値しか生み出せなかったエンド・オブ・ライフ領域に、前例のない可視性とコントロールをもたらしています。規制対応の準備性、測定可能なインパクト、そして利益創出を同時に実現することで、廃棄物管理インフラの“新しい業界標準”になりつつあります。」

2030年までに“10億点のテキスタイル”の再循環を目指す

スーパーサークルはこれまでに600万点以上のテキスタイルを埋立てから回避しており、2030年までに10億点超のテキスタイルを、利益性と責任ある方法で循環させることを目標に掲げる。

同社は、アパレル、フットウェア、アクセサリー、ホーム&ヘルステキスタイルなど幅広いカテゴリーを対象に、消費者向けのフロントエンド(トレードインプログラム)と、サプライチェーンのバックエンド(生産端材、過剰在庫、損傷品、返品の回収・配分)の両面をカバーするフルスタック型プラットフォームとして、小売企業の“循環型サプライチェーン”への移行を後押ししていく。

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