フランスのラグジュアリーメゾン「ディオール(Dior)」は、このたび、中国・北京の三里屯エリアに新たなフラッグシップ空間「ハウス オブ ディオール 北京」をオープンした。北京屈指のカルチャーと商業が交差する同地区の中心に位置するこの施設は、リテールの枠を超え、建築、アート、ガストロノミーを融合させた体験型スペースとして設計されている。
建築を手がけたのは、フランスを代表する建築家クリスチャン・ド・ポルザンパルク(Christian de Portzamparc)。彫刻的な存在感を放つ建物のファサードには、花びらのようなシェル構造が連なり、クリスチャン・ディオール(Christian Dior)がオートクチュール制作において用いたトワルの流動的な動きを想起させるデザインが施されている。
建築家を志していた若き日のクリスチャン・ディオールの原点に敬意を表し、この「ハウス オブ ディオール 北京」は、メゾンのヘリテージと現代性を空間全体で表現する構成となっている。柔らかな自然光に包まれた5層構造のフロアは、象徴的な螺旋階段によってつながれ、ディオールの美学が立体的に展開される設計である。

館内には、プライベートなVIPラウンジをはじめ、世界で最も多くのミシュランの星を獲得してきた女性シェフ、アンヌ=ソフィー・ピック(Anne-Sophie Pic)が監修するレストラン「ムッシュ ディオール(Monsieur Dior)」を併設。
さらに、ホワイトのトワルで満たされたコンセプトルームや、北京の街並みを一望できるプライベートテラスなど、各フロアごとに異なる体験が用意されている点も特徴だ。そこには、ディオールのクチュール精神と現代的な感性が静かに呼応する空間構成が貫かれている。


また、クリスチャン・ディオールが生前、芸術家たちと深い関係を築いていた歴史を反映し、インテリアにはワン・シヤオ(Wang Xiao)、ホン・ハオ(Hong Hao)、フランク・エブヌー(Franck Evennou)、ジオ・ポンティ(Gio Ponti)によるアート作品が配されている。ファッションとアートの対話は、この空間においても重要な要素として位置づけられている。
ホリデーシーズンに合わせ、ウィンドウディスプレイも特別仕様となり、建物全体がまるで劇場のような演出に包まれている。ミニチュアのシーンが連なるその世界観は、訪れる人々をディオールが描く幻想的な物語へと誘う仕掛けだ。この「夢の館」では、ここでしか見ることのできないエクスクルーシブなクリエイションも展開されている。
北京が持つダイナミックな都市エネルギーと、パリ発のメゾンが育んできた創造性。その二つが融合する地点として誕生した「ハウス オブ ディオール 北京」は、ディオールにとって中国市場における存在感を象徴する新たなランドマークとなりそうだ。

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