ケリング(Kering)、イタリア名門ラゼッリ・フランコ・グループの段階的取得を発表

Raselli Franco Group

12月18日(現地時間)、フランスのラグジュアリーグループ「ケリング(Kering)」は、イタリアの家族経営ジュエリーメーカー「ラゼッリ・フランコ・グループ(Raselli Franco Group)」を段階的に取得する契約を締結したと発表した。まずは2026年第1四半期に20%の株式を取得し、2032年までに完全子会社化する明確なロードマップが示されている。

同取引は、ハイジュエリーおよびファインジュエリー分野におけるケリングの長期成長戦略の一環であり、製造工程を含むバリューチェーン全体のコントロール強化を目的としたものだ。

1969年に創業したラゼッリ・フランコ・グループは、ジュエリーのプロトタイピングから量産までを一貫して担う、欧州有数の独立系ジュエリーメーカーである。原材料や貴石の調達、研究開発、デザイン、部品製造、組み立て、品質管理に至るまで、エンド・トゥ・エンドの製造体制を構築している点が大きな特徴である。

特筆すべきは、鋳造技術とCNC(コンピューター数値制御)加工の双方に精通し、貴重な素材を高精度で彫刻・加工できる点だ。これはハイジュエリーおよびファインジュエリーの分野において、業界でも稀有な製造能力であり、長年にわたりケリングの戦略的パートナーとして位置づけられてきた理由でもある。

ケリング傘下のジュエリーメゾンであるブシュロン(Boucheron)、ポメラート(Pomellato)、ドド(Dodo)、キーリン(Qeelin)は、いずれも安定した収益基盤と成長モメンタムを示しており、グループ全体の中でも中長期的な成長ドライバーとして期待されている。今回の買収は、これらのメゾンを支える生産基盤を内製化・高度化することで、クラフツマンシップと競争力をさらに高める狙いがある。

ケリングのCEO、ルカ・デ・メオ(Luca de Meo)は次のようにコメントしている。

「本買収は、ジュエリー分野におけるケリングの野心を体現する、戦略的な節目です。ラゼッリ・フランコ・グループは、豊かなヘリテージに根ざした卓越したサヴォアフェールとイノベーション、そしてサステナビリティへの強いコミットメントを備えています。ジュエリー事業における重要な製造能力を確保することで、本パートナーシップは当社のバリューチェーンを強化し、各メゾンの成長を加速させます。これは、卓越性への揺るぎない姿勢と、ジュエリーの未来を形作るという当社の決意を示すものです。」

一方、ラゼッリ・フランコ・グループのCEO、アンドレア・ラゼッリ(Andrea Raselli)は、今回の合意について次のように述べている。

「ケリングとの本合意を大変うれしく思っています。本提携により当社は一層強化され、長年にわたり誇りを持って協業してきたメゾンに対して、今後も最善の形でサービスを提供し続けることが可能となります。家族経営企業として、私たちは卓越性、イノベーション、俊敏性という価値観を共有しており、ジュエリーの未来に貢献したいという志も同じです。」

なお、今回の取得は総額1億1,500万ユーロで20%の株式を取得する初期段階から始まり、今後段階的に持分を引き上げる計画である。取引の完了は、通常のクロージング条件および規制当局の承認を前提としている。

ジュエリー分野への投資を強めるケリングにとって、今回の動きは単なるM&Aではなく、製造・技術・サヴォアフェールを内包した「ものづくりの中核」を自社グループ内に確立する重要な一手だ。ラグジュアリー産業における垂直統合の流れが、ここでも鮮明になりつつある。

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