ブルネロ クチネリ(Brunello Cucinelli)、揺らぐサックス・グローバルの再編下でも百貨店戦略の維持を表明

Brunello Cucinelli

世界最大級のマルチブランド・ラグジュアリー小売企業「サックス・グローバル(Saks Global)」の経営不安が深まる中、イタリアのラグジュアリーブランド「ブルネロ クチネリ(Brunello Cucinelli)が、百貨店を軸とした卸売戦略を維持する姿勢を明確にしているとロイターが報じた。

サックス・グローバルは、2024年に再建策の中核として数十億ドルを調達し、「ニーマン・マーカス・グループ(Neiman Marcus Group)」を買収。これにより、サックス・フィフス・アベニュー(Saks Fifth Avenue)、サックス・オフ・フィフス(Saks OFF 5TH)、ニーマン・マーカス(Neiman Marcus)、バーグドルフ・グッドマン(Bergdorf Goodman)が一体化し、テクノロジー主導のラグジュアリー百貨店グループの構築を目指してきた。

しかし2025年春時点では、債券保有者が10億ドルを超える評価損を抱えているとされ、同社が米連邦破産法11条(チャプター11)の適用を含む選択肢を検討している可能性も取り沙汰されている。この混乱は、百貨店チャネルへの依存度が高いブランドにとって、構造的なリスクを改めて浮き彫りにするものとなった。

さらに1月2日には、経営体制の刷新も発表された。最高経営責任者(CEO)を務めてきたマーク・メトリック(Marc Metrick)が退任し、エグゼクティブ・チェアマンのリチャード・ベイカー(Richard Baker)が後任としてCEOに就任する。

こうした環境下で、多くのラグジュアリーブランドは、価格統制や在庫管理、利益率の確保を目的に、自社直営店舗へのシフトを一段と加速させている。

だが、ブルネロ クチネリの創業者兼会長であるブルネロ・クチネリ(Brunello Cucinelli)はロイターに対し、卸売チャネルを重視する現在の戦略を維持する方針を明言した。サックス・グローバルとの取引についても、これまでに発生したのは1カ月の支払い遅延のみであり、オペレーション面での問題は生じていないと説明している。

クチネリは「極めて限定的なものを除き、経済的なリスクは想定していません」と述べ、「仮に損失が出たとしても、それは45年の事業の歴史で初めてのことになります。我々のマルチブランド取引における損失率は、年間0.1%にすぎず、実質的には無視できる水準です」とコメントしている。

同業他社と比べても高い卸売比率

なお、ロイターがまとめたデータによると、ブルネロ クチネリの売上高の約36%は卸売チャネルから、約64%は自社直営リテールから生み出されているようだ。これは、多くの主要ラグジュアリーブランドが直営比率を大幅に高めてきた現状と比べると、卸売依存度が高い構造である。

一方、サックス・グローバルは現在、バーグドルフ・グッドマン(Bergdorf Goodman)の少数株式売却を含む資産活用策も検討しており、新体制のもとで財務の立て直しとブランド価値の再構築を実現できるかどうかが、最大の焦点となっている。

百貨店モデルが構造的な転換点に立たされる中で、ブルネロ クチネリが卸売重視の姿勢をあえて崩さない理由は何か。そしてその戦略は、変化の激しいラグジュアリー市場において、どこまで有効性を保ち続けるのか。直営強化が主流となる業界の中で、同社の選択はサックス・グローバルの行方と共に、注視されることとなりそうだ。

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