1月16日(現地時間)、スイスの高級時計ブランド「タグ ホイヤー(Tag Heuer)」は、最高経営責任者(CEO)であるアントワーヌ・パン(Antoine Pin)が退任したことを明らかにした。これは、親会社である「LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH Moët Hennessy ‐ Louis Vuitton)」の発表によるもので、パンはタグ ホイヤーのみならず、23年間在籍したグループからも離れる。
LVMHは声明の中で、パンが「自身のキャリアにおいて新たな章を始めることを決断した」と説明し、「これまでの貢献に感謝するとともに、今後のプロジェクトでの成功を祈る」とコメントしている。
後任CEOは現時点では発表されておらず、「近日中に発表予定」とされている。今回の退任は即日付で有効となり、パンの今後の進路についても明らかにされていない。
2024年就任から短期間でのトップ交代
パンは2024年7月、LVMHのウォッチ部門における経営体制刷新の一環として、タグ ホイヤーのCEOに就任。前任の ジュリアン・トルナーレ(Julien Tornare) は、約6カ月間同職を務めた後、同じくLVMH傘下の ウブロ(Hublot) のCEOに就任している。
名門ビジネススクールHECパリの卒業生であるパンは、1994年にDFSおよび中東地域担当のジュニア・セールスマネージャーとしてタグ ホイヤーに入社。1999年のLVMHによる同社買収以前から、時計業界でのキャリアをスタートさせていた。
2002年には ゼニス(Zenith) のインターナショナル・マーケティング・ディレクターとしてLVMHグループに本格的に加わり、その後グループ内で複数のマネジメント職を歴任。直近では ブルガリ(Bvlgari) において、ウォッチ事業部門のマネージング・ディレクターを務めていた。
F1を中核に据えたブランド戦略の加速
パンのCEO就任後、タグ ホイヤーは親会社LVMHとのグローバルな10年契約のもと、フォーミュラ1の公式タイムキーパーとして復帰した。F1との関係は同ブランドにとって歴史的に重要な要素であり、今回の復帰は長期的なブランド戦略の中核に位置付けられている。
2025年には、3月の新ブランドキャンペーン発表に続き、5月にはモナコ・グランプリにおいて初のタイトルパートナーに就任。これは同レース史上初の事例であり、タグ ホイヤーの存在感を象徴的に示す出来事となった。
さらに米国市場においては、TCSニューヨークシティマラソン(TCS New York City Marathon)で公式タイムキーパーを務めるなど、欧州にとどまらないスポーツ資産への展開を進めた。LVMH公式サイトでもこの協賛が紹介されており、同社のブランドキャンペーン「Designed to Win」との連動が示されている。
コネクテッド領域と次世代顧客への訴求
製品面では、第5世代となるコネクテッドウォッチ「Connected Calibre E5」を展開し、ニューバランス(New Balance)とのコラボレーションモデルを発表。パフォーマンスとテクノロジーを融合させた提案を強化した。
パンの在任期間を通じて、タグ ホイヤーはF1を中核に据え、モナコGP、NYCマラソン、コネクテッド領域へと接点を広げることで、『スポーツ×ラグジュアリー×テクノロジー』という三軸を明確に打ち出してきた。今回の退任は、そうした戦略が一巡したタイミングでのトップ交代となる。
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