LVMH 2025年決算:ファッション減速の一方で際立つセフォラとハイジュエリー

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1月27日(現地時間)、仏ラグジュアリーコングロマリットの「LVMH モエ ヘネシー ルイ ヴィトン(LVMH Moët Hennessy Louis Vuitton)」は、2025年通期決算を発表した。不安定な地政学リスクとマクロ経済環境が続くなか、グループ全体としては底堅い業績を維持した一方、最大の収益源であるファッション&レザーグッズ部門の成長鈍化が改めて明確となった。

2025年の売上高は808億ユーロで、前年比5%減、オーガニックベースでは1%減に。第4四半期のオーガニック成長率は1%と、第3四半期と同水準にとどまった。下期にかけて一部改善の兆しは見られたものの、回復ペースは限定的である。

継続事業利益は178億ユーロで営業利益率は22%。為替変動の影響を受けながらも、高水準を維持した。グループ帰属純利益は109億ユーロ、フリーキャッシュフローは113億ユーロと、前年から8%増加している。

ファッション&レザーグッズ、観光需要の反動が影響

部門別で見ると、グループ最大の収益源であるファッション&レザーグッズは、2025年に減収という結果であった。2024年は円安を背景とした観光客需要、とりわけ日本市場での消費拡大が業績を押し上げていたが、2025年はその反動が顕在化したようだ。

継続事業利益は為替の影響を受け13%減少したものの、営業利益率は35%と依然として極めて高い水準を維持している。価格競争に依存しないブランド力と、高付加価値モデルが引き続き機能していることを示す結果だ。

ルイ ヴィトン(Louis Vuitton)は、ニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquière)およびファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)によるコレクションを通じ、プロダクトとストーリーテリングの両面で強い訴求力を発揮。上海に開設したクルーズ船型の体験空間「ザ・ルイ(The Louis)」は、メゾンの旅の精神を建築と体験に昇華させる象徴的プロジェクトとなった。

また、パット・マクグラス(Pat McGrath)主導による「ラ・ボーテ ルイ・ヴィトン(La Beauté Louis Vuitton)」の始動や、F1公式パートナーとして製作された24点のトロフィー・トランクは、クラフツマンシップと現代的ラグジュアリーの融合を強く印象づけた。

クリスチャン ディオール(Christian Dior)は、ジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)をオートクチュール、メンズ、ウィメンズすべてのクリエイティブ・ディレクターに迎え、新章へと踏み出した。初のショーは記録的な注目を集め、ニューヨーク、ロサンゼルス、北京での新店舗開設とともに、ブランドの国際的存在感を一段と高めている。

ワイン&スピリッツ:シャンパーニュは堅調、コニャックは逆風

ワイン&スピリッツ部門の売上高は、オーガニックベースで前年比5%減、継続事業利益は25%減となった。数年にわたる例外的な成長局面を経て、2023年以降に見られていた需要減速が2025年も続いた形だ。

特に中国および米国における関税問題や貿易摩擦が、ヘネシーを中心とするコニャック需要を押し下げた。一方で、シャンパーニュ事業は引き続き高い競争力を維持し、LVMH傘下メゾンはシャンパーニュAOC出荷量の22%という市場シェアを確保。プロヴァンス産ロゼワインも、世界的にロゼカテゴリー全体を上回るパフォーマンスを示した。

各メゾンは短期的な市況に左右されることなく、ブランドの長期的価値向上に向けた投資を継続すると同時に、効率改善とコスト削減を目的とした構造改革プログラムを進めている。

香水・化粧品:選択と集中による収益性改善

香水・化粧品部門の売上高はオーガニックベースで横ばいだったが、継続事業利益は8%増加し、営業利益率は8.9%へと改善した。大量展開ではなく、イノベーションと選択的リテールを重視する戦略が奏功した形だ。

パルファン・クリスチャン・ディオール(Parfums Christian Dior)は「ミス ディオール エッセンス」や「ディオール オム」の成功に加え、「ソヴァージュ」が世界最大のメンズフレグランスとしての地位を維持。ゲラン(Guerlain)やジバンシィ(Givenchy)も、既存アイコンを軸にした拡張戦略で安定した成果を上げた。

ウォッチ&ジュエリー:ハイジュエリーが牽引役に

ウォッチ&ジュエリー部門は、2025年にオーガニックベースで3%の成長を記録した。ティファニー(Tiffany & Co.)は店舗刷新と象徴的コレクションの強化を同時に進め、「ハードウェア」「ノット」「バード オン ア ロック」などが好調だった。ハイジュエリー「ブルーブック」コレクションは、過去に例を見ない成果を上げた。

ブルガリ(Bvlgari)は「セルペンティ」を軸にした没入型展示を展開し、「ポリクロマ」コレクションでは高額作品の販売で記録的実績を達成。ショーメ(Chaumet)やタグ ホイヤー(TAG Heuer)も、それぞれの象徴的ラインとイベント露出を通じ、ブランド価値の強化を進めている。

セレクティブ・リテーリング:セフォラが成長を牽引

セレクティブ・リテーリング部門は、オーガニック売上で4%成長し、継続事業利益は28%増加した。牽引役となったのはセフォラ(Sephora)であり、売上・利益ともに拡大を続け、ビューティーリテール分野における世界的リーダーの地位を盤石なものとしている。

オムニチャネル戦略への投資と約100店舗の新規出店に加え、新規ブランド導入も奏功。DFSでは事業効率化により収益性が改善し、大中華圏事業の再編も戦略的転換点として位置付けられている。

2026年に向けた姿勢:不確実性下での長期戦略

こうした結果を受け、会長兼CEOのバーナード・アルノー(Bernard Arnault)は2026年の見通しについて、「2026年も不確実な環境が続くなかで、メゾンが人々に夢を与える力、コスト管理に対する最大限の警戒、そして環境および社会的コミットメントは、引き続き我々のリーダーシップを支える決定的な資産となるでしょう」とコメント。

さらに同氏は、LVMHが起業家精神を重んじるファミリーグループとして、短期的な業績変動に左右されることなく、長期的視点に立ったサステナブルな創造性を追求し続ける姿勢を強調した。高品質なプロダクトや卓越した空間体験、そして職人技の未来への継承を通じて、ブランドの価値そのものを磨き続ける考えである。

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