1月27日(現地時間)、ビル・ゲイツ(Bill Gates)の娘、フィービー・ゲイツ(Phoebe Gates)が共同創業したAIショッピングエージェント「フィア(Phia)」が、シリーズAで3,500万ドル(約35億円)を調達したことを発表した。現在同社の評価額は1億8,500万ドルにのぼり、テック業界における話題性だけでなく、コマースの構造変化を象徴する動きとしても注目されている。
これまでECは「いかに多くの商品を見せるか」を競ってきた。しかし現在の消費者が求めているのは、情報量ではなく“納得感”である。選ぶ手間、迷う時間、返品のリスク。こうした摩擦を前提とした購買体験そのものが、見直され始めているのだ。
フィアが目指すのは、AIを使って検索や比較を高速化するのではなく、消費者の購買意図とブランドを直接つなぐ新たなレイヤーの構築である。米国で急速にユーザーを獲得している事実は、AIショッピングが「便利な機能」から「前提となる存在」へ移行しつつあることを示唆している。
ローンチ10カ月でユーザー100万人、6,200ブランドと提携
フィアは2025年4月にローンチされ、わずか10カ月でユーザー数100万人を突破した。現在、コンテンポラリーブランドからラグジュアリーメゾンまで、6,200以上のリテールブランドとパートナーシップを構築する。これらのブランドは年間で数十億ドル規模の流通総額(GMV)を生み出しており、同社は毎月、数百万ドル規模の売上をブランド側にもたらしている。
また、ローンチ以降の売上成長率は11倍。プラットフォーム上のブランドは、コンバージョン率13%向上、新規顧客獲得30%増、平均注文単価15%上昇、返品率50%以上削減といった成果を得ている。
「探す」のではなく「導かれる」ショッピング体験
フィアが提供するのは、従来型の検索体験とは異なるAIショッピングエージェントだ。モバイルアプリおよびブラウザ拡張機能として提供され、ユーザーが商品を検討している最中に、リアルタイムで最適な選択肢を提示する。
中古品やリセール品、価格帯の近い代替商品を提示することで、ユーザーはコストやリスクを抑えながら購買判断ができる。サステナビリティの文脈も含まれるが、フィアがまず重視しているのは「賢く、後悔なく買える体験」の設計である。
創業者主導のオーガニック成長
このフィアの成長を支えている大きな要因の一つが、創業者自身による発信力だ。共同創業者のフィービー・ゲイツとソフィア・キアニ(Sophia Kianni)は、ソーシャルメディアや自社メディアを通じて200万人以上のフォロワーを抱え、累計4億3,000万回を超える視聴数を獲得してきた。
ポッドキャスト「ザ・バーンアウツ(The Burnouts)」では、起業家としての試行錯誤を率直に語りながら、ビジネスやエンターテインメント分野の著名人へのインタビューも行っている。広告に大きく依存しないこのアプローチは、Z世代を中心に支持を集めている。
AI基盤強化と「次のフェーズ」
今回の資金調達は、フィアの中核となるAIおよび機械学習基盤の強化に充てられる。同社のシステムは、日々数十億点の新商品データを取り込み、数百万件の検索を処理している。すでに検索レイテンシーを80%削減し、マネタイズされたGMVを40%向上させてきた。
今後は、リアルタイムで動作する大規模言語モデル(LLM)エージェントの導入を進め、消費者の嗜好や行動を予測する、より高度なパーソナライゼーションを実現する計画だ。ユーザー向けには、嗜好を理解したレコメンデーション、個別リワード、コミュニティ主導のデジタルクローゼット機能などが予定されている。
ソフィア・キアニは、「私たちは、コマースと消費者向けAIの交差点にある難題に、スピード感をもって挑む、少数精鋭で高い自律性を持つチームです。カテゴリを定義するAIコマースプラットフォームを共につくりたい人にとって、Phiaは最適な場所です」と述べる。
また、フィービー・ゲイツは「Phiaは、買い手とブランドの双方にとって“勝ち”となるよう設計しました。人々が本当に好きな商品と出会えるようにしながら、ブランドにはより強固な顧客関係の構築を可能にします」と語っている。
投資家が見る「次世代コマース」
ノータブル・キャピタルのマネージング・パートナーであり、フォーブスのミダス・リストに13回選出された実績を持つハンス・タン(Hans Tung)は、「これまでのショッピングは、エージェントが介在しない“ページとフィルターのインターネット”向けに設計されていました。いまやAIが人と商品との間に入り、課題は“アクセス”ではなく、“意図・嗜好・信頼”をリアルタイムで理解することにあります。Phiaは、その変化を支えるインテリジェンス・レイヤーを構築しています」と説明する。
フィアは今後、世界水準のチーム構築とブランドパートナーの拡大を進めながら、次世代の買い手とブランドをつなぐエンド・トゥ・エンドのショッピングエージェントへと進化していく構えだ。
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