1月30日(現地時間)パリを拠点とするメゾン「アライア(Alaïa)」 は、ベルギー出身のクリエイティブ・ディレクター、ピーター・ミュリエ(Pieter Mulier) が退任することを正式に発表した。ミュリエは、3月にパリ ファッションウィークで発表される2026年秋冬コレクションをもって、同職を離れる。
アライアの最高経営責任者(CEO)である ミリアム・セラーノ(Myriam Serrano) は、「この5年間、ピーターと彼が率いた卓越したチームは、アライアの創造的な刷新を形づくり、そのヘリテージを尊重しながら、メゾンの意義、自信、そしてグローバルな認知を大きく高めてきました」とコメント。
後任のデザイナーについては現時点で発表されておらず、アライアは「新たなクリエイティブ体制が確定するまでの間、スタジオが継続性を担保する」としている。
また、親会社であるリシュモン(Richemont)も声明を発表し、ミュリエの貢献に謝意を示した。その中で同社は、ミュリエが「個人を超えて創造的探究を重んじ、メゾンのチームの手、眼差し、感性を通して生き続ける企業文化」に寄与した点を高く評価している。
アライアにおけるミュリエの功績
ミュリエは、創業者アズディン・アライア(Azzedine Alaïa)の死から3年後にメゾンに迎えられた。女性の身体を彫刻のように捉えるアライアの根源的な美学を深く理解しながら、そこに実験性とモダニズムを重ね合わせることで、メゾンのデザイン言語を現代に更新してきた。フェミニニティを中心に据えたその表現は、過度な装飾やノスタルジーに寄ることなく、構築性と身体性の緊張感によって新たな強度を獲得している。
創造性は商業面にも明確に結びついた。在任期間中、アライアは出店戦略を加速させ、直営の独立店舗網を約20店舗規模へと拡大。とりわけ象徴的だったのが、中国市場への本格進出である。北京・三里屯太古里に開業した中国初の旗艦店では、ミュリエ自身が空間構想にも関与し、建築と衣服が一体となったブランド体験を提示した。

プロダクト面では、メゾンの新たなアイコンを複数生み出した点が特筆される。初コレクションで発表したメッシュのバレリーナシューズは、アライアらしい官能性と日常性を両立するアイテムとして定着。さらに、横長フォルムと長いハンドルが特徴のテッケルバッグ、続くル・クリックなどは、アクセサリー事業の成長を牽引する存在となった。これらの成功により、アライアの事業規模はミュリエ就任以降、実質的に倍増したと見られている。
またショーの在り方においても、ミュリエは明確な美学を示した。公式カレンダーから距離を置き、アントワープの自宅やパリのブティック、ニューヨークのグッゲンハイム美術館など、場所そのものを表現として機能させる発表形式を採用。のちにパリ ファッションウィークの正式日程へと移行するが、その過程自体が、アライアの創造性と独立性を強く印象付けるものとなった。こうした一連の功績は、2025年のCFDAアワードにおけるインターナショナル・デザイナー・オブ・ザ・イヤー受賞によっても、国際的な評価として裏付けられている。
なお、現時点でミュリエの次の動向については公式発表こそないものの、業界では「ヴェルサーチェ(Versace )」への就任が有力視されている。

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