ラグジュアリービューティーブランドのランコム(LANCÔME)が、「肌の長寿(スキン・ロンジェビティ)」という新たな科学領域を本格的に推進する。スイスの寿命科学バイオテクノロジー企業「タイムライン(Timeline®)」社との戦略的パートナーシップを通じ、単なるエイジングケアを超えた“細胞活力”へのアプローチを打ち出した。
同提携は、ロレアルグループが2024年にタイムライン社へ出資したことを起点とする動きであり、美容とロンジェビティ・サイエンスを本格的に結びつける象徴的な一歩である。
細胞エネルギーへのアプローチ──Mitopure®の導入
提携の中核を担うのは、タイムライン社が15年以上の研究と5,000万ドル超の研究開発投資を経て開発した独自分子「ミトピュア(Mitopure®)」である。
ミトピュアは高純度のウロリチンAであり、マイトファジーと呼ばれる細胞更新プロセスを通じて、細胞内のミトコンドリア機能に働きかけるポストバイオティクスとして臨床的に検証されている。ミトコンドリアは細胞のエネルギー産生を担う重要な構造体であり、その機能維持は細胞の健全性と密接に関連している。
ランコムはミトピュアと自社独自成分を組み合わせた新たなスキンケアラインを発表予定であり、各製品は「肌の生物学的年齢」に着目して設計されるという。主要な美容ブランドとして、ミトピュアをグローバル規模で展開する初のケースとなる見込みだ。
ランコムのグローバルブランドプレジデントであるヴァニア・ラカサード(Vania Lacascade)は次のように述べている。
「ランコムにとっての長寿とは、見た目の問題ではなく、根本的な進歩のフロンティアです。Timeline社のような最先端の革新者と提携することで、細胞の活力を取り戻し、女性たちに自分の肌の未来に対する新しい視点を提供することを目指します。」
また、タイムライン社の共同創設者兼プレジデントであるクリス・リンスク(Chris Rinsch)も次のようにコメントしている。
「ランコムとの協力は、Timelineにとってエキサイティングな新章です。私たちの長寿分子Mitopure®をより身近なものにし、その高度な肌への恩恵をかつてないほど広く届ける素晴らしい機会となります。」
ロンジェビティ戦略を支える三つの柱
今回の提携は、ランコムが構築する「ロレアル ロンジェビティ インテグレイティブ サイエンス™」エコシステムを完成させる重要な要素である。同ブランドはすでに、以下の二つの技術的アプローチを推進している。
1. 製品革新
2025年には、特許出願中のローズ由来DNA成分を配合した製品を発表。この成分は細胞の寿命代謝を高めることが知られており、肌の層ごとの老化サインへの作用が実証されている。
2. ビューティーテック「Cell BioPrint™」
韓国のスタートアップ「ナノエンテック(NanoEnTek)」社との提携により開発された「ラボ・オン・チップ」型スキン分析ソリューション。プロテオミクスとマイクロ流体技術を活用し、肌表面のタンパク質バイオマーカーを解析することで、生物学的年齢の推定や将来の肌状態の予測を可能にする。これにより、従来の“問題発生後の対処”から、“データに基づく能動的ケア”への転換を図るという。
AADで披露予定の新ライン
なお、ミトピュアを採用した新たなロンジェビティ・スキンケアラインは、2026年3月27日から29日に米国コロラド州デンバーで開催される米国皮膚科学会(AAD)の年次大会にて披露される予定である。
分析技術、独自有効成分、そして細胞プロセスへの深い理解を統合することで、ランコムは“若々しさの演出”ではなく、“生物学的活力の持続”を目指す新しい美容パラダイムを提示しようとしている。美容とロンジェビティが交差する新章の幕開けである。
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