3月12日(現地時間)、LVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH Moët Hennessy Louis Vuitton)ウォッチ&ジュエリー部門を率いるステファン・ビアンキ(Stéphane Bianchi)は、ベアトリス・ゴアスグラス(Béatrice Goasglas)がタグ ホイヤーの新CEOに就任すると発表した。就任は2026年5月1日付。
タグ ホイヤーは近年、トップ人事の流動性が高いブランドとして知られてきた。ブルガリ(Bulgari)CEOおよびLVMHウォッチ部門CEOを務めるジャン=クリストフ・ババン(Jean-Christophe Babin)2013年が同職を退任して以来、これまでに約6人ものCEOが交代してきた経緯がある。
直近では、アントワーヌ・パン(Antoine Pin)が2024年7月に就任したものの、1年余りで2026年1月に突然退任。今回のゴアスグラスの就任は、こうした不安定な状況に終止符を打つことへの期待を背負ったものでもある。
ゴアスグラスは、セフォラ(Sephora)でのCRMコンサルタントを皮切りに、ロレアル(L’Oréal)でのEコマース担当、ザ・クープルス(The Kooples)のデジタル&カスタマーディレクター、SMCPグループのマーケティング・デジタル・クライアント部門責任者を経て、2018年にTAGホイヤーへ入社。VP デジタル&クライアントエクスペリエンスとしてジュネーブに着任した。
その後、2021年にはシンガポール拠点のタグ ホイヤー アジアパシフィック(TAG Heuer Asia-Pacific)マネージング・ディレクターに昇格。2023年からはマイアミを拠点にタグ ホイヤー アメリカス(TAG Heuer Americas)プレジデントを務め、着実にグローバルな実績を積み上げてきた。

新CEOに課せられたミッションは明確だ。数年来推進されてきたブランドの格上げと革新の戦略を引き継ぎ、モナコ(Monaco)やカレラ(Carrera)といったアイコニックなコレクションをさらに高みへ引き上げること。そして、2025年にロレックス(Rolex)から引き継いだフォーミュラ1(Formula 1)公式タイムキーパーとしての役割を、10年間のパートナーシップのもとで着実に履行していくことである。
このパートナーシップは、モエ・エ・シャンドン(Moët & Chandon)も参加するLVMHとモータースポーツとの大規模な連携の一環でもある。なお、TAGホイヤーは1992年から2003年にも同職を務めた実績を持つ。
ビアンキは今回の人事について次のように語っている。
「ベアトリスはタグ ホイヤーで輝かしいキャリアを積み重ねてきました。彼女がこの象徴的な時計メゾンの舵取りを担うことを、私は心から嬉しく思います。ブランドへの深い理解と、そのリーダーシップおよび並外れた献身により、TAGホイヤーはさらなる高みへと到達し、このブランドが大切にしてきた卓越した時計製造品質とアバンギャルドの精神を体現し続けることができるでしょう。」
就任のタイミングは、決して追い風とは言えない。スイス時計業界全体が、不動産危機に起因する消費者マインドの低下が続く中国市場での需要低迷に苦しんでいる。もう一方の主要市場である米国でも、株式市場の不安定さや地政学的リスクが影を落とす。
それでも、昨年第4四半期にはLVMH傘下の時計ブランド群の売上が緩やかな回復を見せており、業界全体の輸出も12月に増加に転じた。ブランドへの深い知見を持つゴアスグラスが、この局面をどう乗り越えていくかが注目される。
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