CO2は資源になり得るのか?スタートアップ「ルビ(Rubi)」、750万ドル調達と6,000万ドル超の契約で次世代素材の商業化へ

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サンフランシスコを拠点とするスタートアップ「ルビ(Rubi)」が、CO2を原料とした素材製造技術の商業化において新たな段階へと進んだ。

3月17日(現地時間)、同社は750万ドルの資金調達を実施するとともに、主要ファッションブランドおよび製造企業と総額6,000万ドル超にのぼる複数年のオフテイク契約を締結したことを発表した。さらに、商業パートナーシップの拡大と生産試験のスケールアップを進め、産業実証フェーズへの移行を明確に打ち出した。

資金調達と商業化の進展

今回の資金調達は、エーピー・ベンチャーズ(AP Ventures)およびエフエイチ・ワン・インベストメンツ(FH One Investments)が共同主導し、タリス・キャピタル(Talis Capital)、シーエムピーシー・ベンチャーズ(CMPC Ventures)、エイチ・アンド・エム・グループ(H&M Group)、アンダーストーリー・ベンチャーズ(Understorey Ventures)などが参加。調達資金は、生産システムの産業実証段階への拡張に加え、新規プロダクトの商業化、そして酵素技術の性能向上とコスト削減に充てられる。

2025年には、ウォルマート(Walmart)やリフォーメーション(Reformation)を含むパートナー企業との連携を拡大し、パートナー数は7社から15社へと増加。複数企業との繊維性能テストも完了している。さらに、消費財(CPG)および航空宇宙分野における新規パイロットも開始され、用途の拡張が進んでいる。

CO2を素材へと転換する技術の中核

ルビの技術の特徴は、CO2を「廃棄物」ではなく「原料」として再定義している点だ。

同社はセルフリー酵素プラットフォームを活用し、CO2のような単純な炭素分子からセルロース系ポリマーなどの複雑な素材を生成する。従来の発酵や石油化学プロセスとは異なり、複数の酵素を連鎖的に作用させることで、より柔軟かつ効率的な生産を可能にしている。

さらに、AIおよび機械学習を活用した酵素設計により、性能やコスト効率の継続的な改善が図られている。

既存産業構造への課題提起

従来の素材製造は、天然資源の大量消費とエネルギー集約型プロセスに依存しており、産業全体で世界のCO2排出量の約30%を占めるとされる。特にテキスタイル産業は、世界で3番目に排出量の多いサプライチェーンとされ、持続可能性の観点から大きな転換が求められている。

こうした背景に対し、ルビは分散型かつモジュラー型の製造モデルを提示する。従来の大規模インフラに依存せず、最大で10分の1の設備投資で導入可能な生産ユニットを、需要地に近い場所へ配置できる点が特徴である。

共同創業者兼CEOのニー カ・マショフ(Neeka Mashouf)は、同社の技術と現在地について次のように述べている。

「私たちは、セルフリーのマルチ酵素経路によって、CO2から重要素材を効率的かつスケーラブルに製造できると信じ、ルビを立ち上げました。現在、この技術が顧客の製品基準を満たし、あるいはそれを上回る形でスケール可能であることを実証したのです。これは商業化における重要な転換点です。」

また、マショフは市場課題について「ルビのモジュラー型製造システムは、現代産業が直面する重要課題(サプライチェーンの強靭性、生産の柔軟性、そして資本効率の向上)に対応するもの」と説明。「従来の製造プロセスは巨大な固定インフラを必要とし、サプライチェーンの脆弱性を生み出しています。ルビは、CO2を価値ある資源へと変換し、必要な場所で生産できるモジュラー型システムによって、この構造的課題を解決するために生まれました」と続けた。

産業スケールへの移行と今後の展望

ルビは2021年、ニー カ・マショフとレイラ・マショフ博士によって設立された。同社は単一素材の代替にとどまらず、レジリエンスと柔軟性を備えた新たな製造インフラの構築を目指している。CO2を原料とする分散型製造は、ローカル生産の実現と輸送依存の低減、そしてサプライチェーンの安定化を可能にする。

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現在、ルビはパイロット段階から産業実証フェーズへと移行しつつあり、今後はテキスタイルおよび消費財分野に向けた商業規模での素材供給を目指す。

エーピー・ベンチャーズのパートナーであるケビン・エガース(Kevin Eggers)は次のように評価する。

「ルビはパイロット段階から産業実証へと進む重要な転換点にあります。差別化された科学技術を商業的成果へと結びつけており、次の成長フェーズへの移行を支援できることを嬉しく思います。」

CO2を単なる排出物ではなく、次世代の資源として捉える発想。その実装に向けた動きは、素材産業のみならず、ファッションを含む広範な産業構造の再定義につながる可能性を持つものである。

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