細尾(HOSOO)、シアスター・ゲイツとの協働展「Glorious Robe」を開催

HOSOO

京都の西陣の織元「細尾(HOSOO)」は、このたび、現代アーティストのシアスター・ゲイツ(Theaster Gates)とのコラボレーションによる展覧会「シアスター・ゲイツ:Glorious Robe(グロリアス・ローブ)」を開催する。会期は2026年4月11日から8月30日まで、HOSOO GALLERYにて実施される。入場は無料。

同展は、2024年に森美術館で開催された「アフロ民藝」を契機に始まった両者の協働の延長線上に位置づけられるものだ。織物や衣服を芸術的実践として再解釈し、その対話の中から生まれた新作群が一堂に紹介される。

異文化の交差から生まれる新たな衣服

同展の中心となるのは、西アフリカの伝統衣装「ダシキ」と、日本の着物という異なる文化を融合させた「ダシキモノ(Dashikimono)」である。

ダシキは民族やコミュニティのルーツと結びつき、1960年代のアメリカではブラック・パワー運動の象徴として広がった。一方、着物は日本の生活や染織文化の歴史を体現する衣服である。この二つの文化的系譜を横断することで、衣服は単なる装いを超え、歴史や思想を内包する存在として再定義される。

また、ゲイツの作品において繰り返し現れる「器(Vessel)」も重要な要素として提示される。器は衣服と同様に、単なる実用品ではなく、文化や精神、共同体の記憶を宿す存在である。同展では、衣服と器がともに「身体のメタファー」として扱われ、世代を超えて受け継がれてきた文化や歴史を織り直す視点が示される。

帯に織り込まれた歴史と記憶

同展では、日本の帯を用いたシリーズ作品も公開される。これらは、マーティン・ルーサー・キング(Martin Luther King Jr.)、マルコムX(Malcolm X)、メドガー・エヴァーズ(Medgar Evers)といった黒人解放運動の指導者たちを追悼するものであり、象徴的なフィストマークと没年が織り込まれている。

これらの作品は、ホワイト・キューブ・バーモンジーでの個展「1965:マルコム・イン・ウィンター:翻訳の試み」で初公開されたものであり、その背景には、ジャーナリスト長田衛と石谷春日によって収集・編纂されたマルコムXに関するアーカイヴが存在する。1965年の暗殺現場に立ち会った経験を起点に構築されたこの資料群は、日本におけるブラック・アメリカの歴史理解を支えてきた重要な記録でもある。

帯という日本の伝統的な装束は、同展において共同体の記憶や歴史を継承する媒体として再解釈される。ゲイツはこれらのアーカイヴに着目し、芸術を通じて新たな生命を与える実践を継続している。

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シアスター・ゲイツ《Obi》「1965:マルコム・イン・ウィンター:翻訳の試み(1965: Malcolm in Winter: A Translation Exercise)」展、2025年、ホワイト・キューブ・バーモンジー © Theaster Gates and White Cube. Photo: Ollie Hammick

工芸とアーカイヴを接続する展示構成

同展では、ゲイツが制作した陶芸作品「Vessel」を茶入の仕覆のように織物で覆った新作や、森美術館「アフロ民藝」展に出品された「Banner」「Kimono」の再制作・再展示が行われる。

加えて、2025年に収録された石谷春日による朗読音源や、津軽三味線奏者・小山豊によるゴスペル演奏が日本で初めて公開されるなど、視覚芸術にとどまらない多層的な展示が展開される。

こうした構成は、ゲイツが一貫して取り組んできた「アーカイヴに新たな生命を吹き込む」という思想を体現するものだ。衣服や器といった工芸的実践は、同展において「精神の器」として提示され、歴史や文化、さらには社会的なムーヴメントとの関係性を問い直す契機となる。

西陣織の伝統と現代美術の交差点

細尾は1688年に京都・西陣で創業し、約1200年の歴史を持つ西陣織の技術を継承してきた。現在では約2万点に及ぶ帯図案のアーカイヴを有し、伝統と革新を融合させたテキスタイルを国内外に展開している。

同展においても、帯の意匠にはこの膨大なアーカイヴが活用されている。歴史的資産と現代アートが交差することで、工芸は過去の遺産にとどまらず、現在進行形の文化として再提示される。

シアスター・ゲイツについて

シアスター・ゲイツは、彫刻や陶芸、パフォーマンス、都市開発など複数の領域を横断する実践で知られる現代アーティスト。これまで、評価されてこなかったブラック・カルチャーに関するオブジェやアーカイヴ、さらには場所そのものに着目し、それらを収集・再編成することで新たな価値を提示してきた。

彫刻と都市計画のバックグラウンドを持つゲイツは、芸術を単なる表現にとどめず、社会的・文化的な実践として位置づけている点に特徴がある。近年は「ブラック・スペース」という概念を軸に、集団的な記憶や歴史の再構築に取り組み続けている。

主な展覧会には、スマート美術館(シカゴ、2025–2026年)、アルバカーキ財団(ポルトガル、2025年)、森美術館(東京、2024年)などがあり、グッゲンハイム・フェローシップ(2025年)、イサム・ノグチ賞(2023年)などを受賞している。

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Portrait of Theaster Gates at his studio in Chicago, 2024. Photo: Lyndon French Courtesy of Theaster Gates Studio

<展覧会概要>

  • 展覧会名:シアスター・ゲイツ:Glorious Robe
  • 会期:2026年4月11日(土)〜8月30日(日)
  • 会場:HOSOO GALLERY(京都市中京区柿本町412 HOSOO FLAGSHIP STORE 2F)
  • 開館時間:10:30〜18:00(入場は閉館15分前まで)
  • 入場料:無料
  • URL:www.hosoogallery.jp

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