ロンドンの老舗百貨店「セルフリッジズ(Selfridges)」、最上位顧客向け会員空間「40 Duke」を開設

Courtesy of Selfridges/ Lucia Bell-Epstein

4月9日(現地時間)、ロンドンの老舗百貨店「セルフリッジズ(Selfridges)」は、新たな会員制空間「40 Duke」を正式にオープンした。過去10年で最大規模の投資と位置付けられるこのプロジェクトは、パーソナルショッピングという概念をはるかに超え、リテール・ホスピタリティ・カルチャーを一体化した、次世代型ラグジュアリー体験の誕生を告げるものだ。

「買う場所」から「過ごす場所」へ

約25,000平方フィートに広がる40 Dukeは、従来のショッピングスイートを再定義し、“メンバーズクラブ型”の空間へと進化させた。館内には24のパーソナルショッピングスタジオをはじめ、レストラン、テラスカフェ、プライベートダイニング、イベントスペース、ギャラリー、ビューティースタジオ、コンシェルジュ機能が集約されている。高額商品に対応するセキュアなショールームやトリートメントルームの設置も、従来の百貨店体験との差別化を際立たせる要素だ。

中核を成すのが、明確に設計された会員専用エリアである。64席と18席のバーを備えるクラブラウンジは、顧客、ブランド、クリエイターが交差するハブとして機能。その奥には、14席のプライベートダイニング空間「クラブルーム」が配置され、より密度の高い体験を可能にする。

さらに、58席の屋根付きテラスでは、オックスフォード・ストリートの喧騒から切り離された環境で食事や滞在を楽しむことができる。これらの空間は個別に機能するのではなく、ショッピング、食、交流、文化体験が連続する“回遊型の導線”として構築されている。

40 Duke Lobby

アクセスの鍵は、消費ではなくエンゲージメント

「40 Duke」へのアクセスは、一般的な会員制クラブのような審査や紹介ではなく、同社のロイヤルティプログラム「Unlocked」を通じて提供される。中でも最上位層であるVVSP(Very Very Selfridges Person)には施設全体へのフルアクセスが付与され、パーソナルショッピング、ダイニング、イベント体験を自由に利用することが可能だ。

一方で、その下位に位置するVSP(Very Selfridges Person)は、パーソナルショッピングやダイニングの予約を通じて空間へアクセスできる仕組みとなっている。さらに、中間層の会員についても、ビューティートリートメントやショッピングアポイントメントを通じて一部体験が開かれている。

つまり、アクセスの基準は単なる“会員資格”ではなく、“顧客としての価値と関係性”に基づいて設計されている。一部報道では年間約2万ポンド(約2万6,800ドル)規模の支出を行う顧客層が対象とされており、ラグジュアリー消費者の中でも特に高い購買力を持つ層にフォーカスした戦略である。

この戦略は、ラグジュアリー市場全体が減速傾向にある中でも、高額消費者が引き続き市場を牽引している現状を踏まえたものだ。顧客の“量”ではなく“質”へとフォーカスを移し、限られた顧客に対して深い体験価値を提供する構造へと転換が進んでいる。

40 Duke Show case

40 Duke shopping suites

空間そのものが、体験であり商品である

空間に溶け込むインテリアは、ナイス・プロジェクツ(Nice Projects)が手がけ、コルクやマーブル、トラバーチンなど多様な素材が用いられている。家具はテクタ(Tecta)、フィン・ユール(Finn Juhl)、デ・セデ(De Sede)、タッキーニ(Tacchini)、アルフレックス(Arflex)などから選定され、さらにザ・フューチャー・パーフェクト(The Future Perfect)との協働によりキュレーションされている。

特徴的なのは、それらの多くが購入可能である点だ。空間に配された椅子・照明・オブジェがそのまま販売対象となり、体験と消費が自然に溶け合う構造が生まれている。アートについても、マット・ウィリアムズ(Matt Williams)によるキュレーションのもと、顧客とアーティストをつなぐ役割を担う。

40 Duke club lounge

40 Duke beauty suits

1909年の精神を、現代語で

1909年の創業以来、「ショッピングを体験へと昇華する」ことを掲げてきたセルフリッジズにとって、「40 Duke」はその思想を現代的に再解釈したプロジェクトである。

モノ単体での差別化が限界を迎えつつあるラグジュアリー市場において、問われているのは「何を売るか」ではなく「どんな時間を提供できるか」だ。

朝のショッピングアポイントメントから、夕刻の食事、夜のバーまで――顧客の一日がシームレスにデザインされた40 Dukeでは、滞在時間そのものが価値となる。

同時に、近年勢いを失っているラグジュアリー百貨店のこれからの在り方を示す重要な試みとしても位置付けられる。

Copyright © 2026 Oui Speak Fashion. All rights reserved.

No Comments Yet

Leave a Reply

Your email address will not be published.