バレンシアガ 2023年秋冬コレクション: クチュールへの原点回帰

Balenciaga
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3月5日(現地時間)、バレンシアガ(Balenciaga)は2023年秋冬コレクションをパリ ファッションウィークで発表した。

会場はルーブル美術館の下層階にあるカルーセル デュ ルーヴルで行われ、ランウェイは飾り気のないシンプルそのもの。フロントロウに華やかなセレブたちの姿もなかった。

それもそのはずだ。昨年11月、バレンシアガは2023年春シーズンの広告キャンペーンで、幼い2人の少女がボンデージギアを着用しているテディベアを持ち、まるで児童ポルノを連想させると批判を受け、炎上を起こしたばかり。また、同時期にローンチされた別のキャンペーン広告でも、撮影に使われた小物の中に、児童の性的虐待画像に関する連邦最高裁の判決文書とみられる書類が写っており、そこでも更に物議を醸した。

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ブランドとクリエイティブ ディレクターのデムナ(Demna)は共に、インスタグラムで公式謝罪文の声明を発表したが、ブランドについた傷を回復するのは簡単ではなく、しばらくの間自粛モードが続いていた。

パリでのバレンシアガ(Balenciaga)は2023年秋冬コレクションは、そんな2つのスキャンダルの後、初となるランウェイショーだった。それだけに世間からも「バレンシアガはどんなショーを見せるのか」という注目が集っていた。

デムナは、今回のショーを「ファッションとは」という問いと共に原点回帰を図る為、入念に作り込みんでいた。また彼は、前回のバレンシアガのショーについて「泥の中をランウェイにしてモデル達が歩いたセットは、人々の注目を浴びたが、観客が服を見ていないことにも気がついた。」と語っていた。

今回のコレクションでは、テーラリング、バリュームのあるバイカージャケットやダウンジャケット、フーディ、そしてイブニングドレスの3つのセグメントに分けられて行われた。

ブランドが炎上の渦中に置かれた昨年12月、デムナは自宅で裁断したパンツを使った服作りを始めたのだが、ショーの第1部に現れたコートやブレザージャケットは、すべてバレンシアガのストックのズボンからクチュールチームが作り直したものとのこと。一度解体されて作り直されたスーツのテーラリングは、シャープでシンプルな無駄がないデザインになっていた。また、どのピースにもバレンシアガのロゴがなく、どれも私たちがこれまでに認知していたデムナの作り出す奇抜なデザインとは違う控えめなものだった。

コレクション全体で特徴的だったのが、肩幅の広いショルダーのルックだ。メンズではシンプルで控えめなデザインに、かっちりとしたワイドショルダーのルックが並んだ。

またメンズのルックの中には、ショルダー部分が首元を全て覆い隠すほどに盛り上がり、なだらかな丸みを帯びているものも登場した。またその盛り上がりはトルソー部分にも採用されて、横から見ると上半身が3Dのように厚くなっていた。

ウィメンズでは、直線的にカッティングされた軽やかなシルクドレスやアニマル柄のレザーコートに、メンズ同様のワイドショルダーが取り入れられていた。

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コレクションのフィナーレで披露された女性のイブニングドレスでは目を見張るものがあった。スワロフスキーで埋め尽くされたロングドレスは遠くからでもその存在感と輝きを放ち続けた。それに加えて、広く、丸く盛り上がった特徴的なショルダーと、ウエスト部分をキュッと結んだリボンが絶妙なバランスとそのコントラストを生み出し、女性らしい曲線美を表現していた。

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ブランドの炎上からこのコレクションを迎えるまでに、デムナは様々な苦境な困難に立たされ、デザイナーとしての立場について深く考える時間を過ごしたことだろう。これまでのような派手な演出や、アーティスティックなひねりは見られなかったものの、彼のブランドを新たに再出発させようとする強い決心が、今回のショーでは手にとるように感じられた。それと同時に、デムナからメゾンの創立者であるクリストバル・バレンシアガが生み出してきたサヴォアフェールへの敬意が伝わるものだった。