3月10日(現地時間)、シーエフシーエル(CFCL)は、パリ ファッションウィークにて、2026年秋冬コレクションを発表した。
会場は、パレ・ド・トーキョー(Palais de Tokyo)内のレストラン「ソー・デュ・ルー(Saut du Loup)」。柔らかな自然光が差し込む開放的な空間の中、ニューヨーク拠点のアーティスト、ベン・ヴィダ(Ben Vida)によるライブパフォーマンスが行われ、ミニマルなサウンドと詩的な声の語りが緊張感をまといながら幾層にも重なり合う、唯一無二の空気感を演出した。
ヨーゼフ・ボイスの「社会彫刻」を纏う
VOL.12のテーマは「Knit-ware: Sculpture(ニットウエア:彫刻)」。その核心にあるのは、没後40年を迎えるドイツの芸術家、ヨーゼフ・ボイス(Joseph Beuys)の「社会彫刻」という概念だ。社会運動とアートを結びつけ、芸術の定義そのものを拡張したボイスの実践に学びながら、シーエフシーエルは「衣服とは何か」という問いを改めて投げかける。
着る人と社会を結ぶメディアとしての衣服。それは、身に纏うことで作り手の意志を拡散するマルチプル作品でもある、というブランドの哲学が、このコレクションに凝縮されている。
フェルトから彫刻へ——TW INLAYコートの存在感
コレクションの大きな軸となるのが、ボイスのフェルト作品群に着想を得た「FELT INSPIRATION」であった。なかでも「TW INLAY」シリーズのコートは、圧倒的な存在感でコレクションの世界観を体現する。
ニュージーランド産のノンミュールジングウールと内モンゴル産カシミヤをブレンドした編み地に、弾力性の高い再生ポリエステルを挟み込む三重構造。肉厚な張りと温かみを両立させながら、ニットならではの編み端を活かした仕立てが、まるでフェルトを纏っているかのような無造作なドレープを生み出している。
裏地を持たないボリュームあるシルエットは、首の後ろに渡した帯が後身頃に強いドレープを引き出す構造になっており、着る人の動きとともに彫刻的なフォルムが変化する。チャコールグレーやオールブラックといった抑制されたカラーパレットの中に、ときにレッドや鮮やかなパープルが差し込まれ、モノトーンの静謐さと色彩の緊張感が交互に訪れた。






無造作なドレープの現代的解釈
「AC MILAN」および「MILAN VELVET」シリーズでは、複数の薄手素材を用いて無造作なドレープを現代的に描き出す。再生ポリエステル100%の定番「MILAN」シリーズに加え、アセテートのブライト糸をブレンドした「AC MILAN」、レーヨンのモール糸をブレンドした「MILAN VELVET」によって、繊細なドレープを秋冬らしく表現。身返しのないニットならではの仕立てにより、軽やかさとドレープ感を同時に実現している。レッドとブラックの大胆なコントラストによる造形や、ライトグレーの素材を幾重にも重ねたスタイリングなど、着る人の体の動きによって表情を変えるピースが並んだ。



樫の木の樹皮:ブランド初のモチーフ柄
また、コレクションのハイライトのひとつとなったのが、ブランド創設以来初となるモチーフ柄の登場だ。ボイスがドイツのカッセルで手がけた「7000本の樫の木(7000 Oaks)」(1982-1987)プロジェクトへのオマージュとして、樫の木の樹皮から着想を得た箔プリントが展開された。
「BARK INSPIRATION」と名付けられたこのシリーズは、フラットな箔プリントにとどまらず、3Dテクスチャーへと発展し、スペシャルなオケージョンドレスへと昇華されている。
1本1本、手で通された1265本のフリンジ
ショー後半にかけて、コレクションはよりドラマティックな様相を帯びていく。「FLUFFY FRINGE FOIL」のドレス群は、箔プリントを施したプレート状のニットフリンジと、2色のメタリックな糸状フリンジ計3種類、合計1265本を、本体にプログラミングで開けられた穴に1本1本手で通すという気の遠くなるような工程を経て完成する。
オーバーサイズのジャケットと合わせたモードなスタイリングから、フリンジが全身を包む圧倒的なボリュームのドレスまで、着る人をまるごと「彫刻」へと変容させるような表現が続いた。フィナーレに向けて高まるその迫力は、コレクション全体の問いかけ「衣服は社会を変えられるか」への、もっとも雄弁な回答のように映った。




サステナビリティとB Corp認証
シーエフシーエルは2022年7月、日本のアパレル企業として初めてB コープ(B Corp)認証を取得している。2026年1月には日本企業として最高得点で再認証されており、素材の選定からサプライチェーンの透明性まで、あらゆる側面でサステナビリティへの真摯な姿勢を貫いている。TW INLAYシリーズに使用するノンミュールジングウールや、再生ポリエステルの活用もその一環だ。
また、サプライチェーンの透明性にこだわるスニーカーブランド「ヴェジャ(VEJA)」とのコラボレーション第2弾も同コレクションで披露。機能的なデザインと革新的な素材への探求をさらに深めた今作は、2026年初秋の発売を予定している。

シーエフシーエルはこのコレクションを通じて、「より良い社会を服づくりを通して作れないか」というブランドの根幹にある問いに、最も真摯に、そして最も美しく向き合った。
ボイスが「誰もがアーティストである」と説いたように、シーエフシーエルは、着る人自身が社会という名の彫刻を形づくる存在として、「誰もが彫刻家である」と語りかけているようだ。
シーエフシーエル 2026年秋冬コレクションの全てのルックは、以下のギャラリーから。
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