7月8日(現地時間)、シャネル(CHANEL)は、パリ オートクチュール ウィークにて、2025年秋冬オートクチュールコレクションを発表した。オートクチュール110周年という節目の年を迎えたシャネルの同コレクションは、インハウスチームによって制作され、改めてメゾンの根幹にある「ラグジュアリー」「歴史」「エレガンス」という価値を再確認させるものだった。
会場に選ばれたのは、グラン・パレ内のサロン・ドヌール。セットデザイナーのウィロ・ペロン(Willo Perron)が手がけた空間は、カンボン通り31番地にある伝説的なクチュールサロンをミニマルかつ優雅に再現。そこには、1918年から1970年にかけてガブリエル・シャネル(Gabrielle Chanel)が実際にコレクションを発表していた記憶が息づき、さらに2021年にジャック・グランジュ(Jacques Grange)が施した改装による現代的な美意識も織り交ぜられていた。
また、来場者にはショーの招待状とともに書籍『Chanel Haute Couture』が届けられた。同書の編集を手がけたソフィア・コッポラ(Sofia Coppola)は、「服をマネキンに着せた学術的な視点ではなく、日常でどのように着られているのか、どんな女性たちが着ているのかに焦点を当てました」と語っており、クチュールを生きた文化として捉える視座が伺える。
コレクションは、エクリュ一色のパレットから幕を開けた。柔らかなアイボリーやエクリュのツイードが、ミディドレスや構築的なセットアップへと仕立てられ、メゾンの卓越したクラフツマンシップを体現。そこに組み合わされたのは、フェザーを重ねたスカートやコート、シアリング風のツイードなど、テキスタイルと装飾の職人技を際立たせるアイテムの数々である。素材そのものから生まれる表現力は卓越しており、動きや光を捉える生地が、まるで魔法のような瞬間を生み出していた。



さらに印象的だったのが、シャネルのコードの再解釈である。当時、ガブリエル・シャネルが好んでいた黄金の麦の束のモチーフは、首元の刺繍やシフォン、ジュエルボタンとして登場。自然と豊かさを意味するこの意匠が、幻想的で牧歌的なムードを引き締めていた。
シルエットは1920年代のフラッパー・スタイルからインスピレーションを受けており、ローウエストやミディ丈のドレスが軽やかに舞う。また、羽根や透け感のあるレースといった装飾性を取り入れながらも、ルック全体はどこまでもシャネルらしい洗練を保っていた。足元には、英国の田園地帯を想起させる膝丈やオーバーニーブーツが合わせられ、ノスタルジーとモダンの見事な融合が見られた。






美しいショーのフィナーレは、伝統的なシャネル・ブライドが登場した。白のロングドレスには繊細なスパンコールと麦のディテールが施され、ヴェールは、1920年代のクラシカルな魅力を引き出すヘッドバンドスタイル。モデルはクラッチの代わりに麦の束を手に持っており、自然との調和やサステナビリティの時代における新たな美意識を象徴しているようだった。

そして今、この優美な余韻の中で、メゾンは次なる章へと歩みを進めている。新クリエイティブディレクターのマチュー・ブレイジー(Matthieu Blazy)による待望のデビューコレクションは、10月のパリファッションウィークにて披露される予定である。
シャネル 2025年秋冬オートクチュールコレクションの全てのルックは、以下のギャラリーから。
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