ディオールのショーに訪れたゲスト達は、まるで別の世界か、もしくは別の惑星に上陸したような感覚を覚えたに違いない。
12月3日(エジプト現地時間)、ディオールは2023年フォールメンズコレクションをエジプトのギザで発表した。「世界三大ピラミッド」が並ぶ広大な砂漠を舞台に、古代文明とメゾンの歴史、近未来のが融合するような、壮大かつ幻想的なショーが行われた。
夕暮れ時、ギザの砂漠の地平線上には、LEDの光で照らされた巨大なランウェイが出現する。そこにテクノミュージックが流れ、ランウェイにファッションモデル達が出現すると、3つのピラミッドが連続してライトアップされ、暗く静寂だった空にピラミッドの輪郭が白く浮かび上がった。
透き通るようなブロンドヘアに、1980年代のカジュアルなテーラリング、ムーンブーツを履いた最初のモデルが現れると、それはまるで1984年に上映された映画 デヴィッド・リンチ版『DUNE/デューン 砂の惑星』に出てくる映画キャラクターの様。
その後もショーでは、砂や石、白のニュートラルカラーを基調とした、チュールスカーフや流れるような素材とレイヤリングをしたルックや、肩や袖にゆとりのあるジャケットの上に、ロールネックやテクニカルなアイテムが組み合わされた、近未来的で頑張り過ぎていないテーラリングが散りばめられた。
モデルたちは、3Dプリントで作られたモノグラムのボディベストをまとい、宇宙用ヘルメットを片手に持って歩く。中にはイルミナティのピラミッドや星座のグラフィックなど、“迷信”のモチーフが取り入れられた、様々な色のニットも登場した。
今回のショーについてディオールのデザイナーを務めるキム・ジョーンズは、カルト映画監督のアレハンドロ・ホドロフスキーが 1970年代半ばに小説をスクリーンに持ち込もうとして失敗した絵コンテに最も影響を受けたと語った。それはアーティストのメビウスと H.R.ギーガーによって作成された何千もの準備用のスケッチだ。
ショーの最後では、生のオーケストラが英国の作曲家マックス・リヒターによる楽曲を演奏し、観客達はレーザーや投光照明で照射された風景だけでなく、そのシーン全体に目を奪われていた。
今回のショーでデザイナーのジョーンズは、演出を手がける監督としての役割も果たし、ブランドのアーカイブとその先に広がる世界から神秘的なスペクタクルを作り上げたと言えるだろう。
また、会場にはロバート・パティンソン、ナオミ・キャンベル、ダニエル・カルーヤ、ルイス・ハミルトン、K-POPアイドルグループASTROのメンバーであるチャ・ウヌやEXOのセフンなど豪華顔ぶれを始めとする約800名のゲストが集結した。