ファーフェッチ(Farfetch)、ビューティー部門を閉鎖する可能性

昨年4月、ラグジュアリー・マーケットプレイスのファーフェッチ(Farfetch)はビューティー分野に参入をし、大きな話題を呼んだ。しかし、最近同社が美容部門運営の困難に直面しており、業界関係者の間では、ファーフェッチの美容部門が閉鎖される可能性があるという報告がされている。

当時ファーフェッチにとって、独自のビューティーカテゴリーの立ち上げは、2022年1月のビューティー小売業者ヴァイオレット・グレイ(Violet Grey )の買収に続くものであり、約690億ドルと想定される世界のラグジュアリービューティー市場狙い、大きな期待が寄せられていた。実際に、同社のビューティーカテゴリーには、有名なイギリスのメイクアップアーティストシャーロット・ティルベリー(Charlotte Tilbury)から、スイスの高級スキンケアブランドラ・メール(La Mer)まで、100を超えるブランドの見事なラインナップが並ぶ。

また、カリスマ・メイクアップアーティストのイサマヤ・フレンチ(Isamaya Ffrench)や双子のDJ兼インフルエンサーの シミ・ヘイズ(Simi Haze)手がける先進的なビューティーブランドの品揃えや、従来の美容の常識を覆すマーケティングでも知られる様になっていた。

競争が激化するビューティー市場

ファーフェッチの期待とは裏腹に、プレステージビューティーの顧客を巡り、美容小売業者の間での競争は激化しており、近年ネッタポルテ(Net-a-Porter)、センス(Ssense)、リアルリアル(The RealReal)など、多数のデジタル・プラットフォームがこのカテゴリーに足を踏み入れている。リアルリアル(The RealReal)に関しては、今年の初めに事業を停止したことが確認された。

一方で、ファーフェッチが他のオンラインプレーヤーと異なるのは、自社での仕入販売は行わず、在庫を持たないマッチングプラットフォームであるという点だ。同社のモデルは「Eコンセッション(E-Concession)モデル」と呼ばれ、アパレルブランドや小売業者はファーフェッチのマーケットプレイス上に商品を出品し、消費者が商品を選択・購入すると出品者から直接出荷される仕組みである。

しかし、eコマース促進企業フロントローのベンチャー投資を率いるビューティー投資家、ランズリー・カーピオ氏(Ransley Carpio)は、「ビューティーにおけるe-コンセッションモデルは、厳しい制約と流通契約のため、非常に難しい」とVogue Businessへの取材の中で語った。同時に、ヴァイオレット・グレイやブラウンズ、ファーフェッチの在庫を組み合わせた複数の在庫システムは、「煩雑」で管理が複雑さも指摘。通常、ビューティブランドは、独占権を維持するため、あるいは正しい販売チャネルを維持するため、特にプロフェッショナルブランドであれば、かなり限定的な販売契約を結んでおり、提携できる小売店は限られているからだ。

また、セフォラ(Sephora)やウルタ・ビューティー(Ulta Beauty)といったこの2つの大型美容店舗この2つの大型美容店は、店舗数や顧客数、認知度という点でも、他者を引き離し、美容業界を牽引している存在だ。近年では、これまで自社販売のみに限定していたグロシエ(Glossier)がセフォラと提携を結んだり、イスラエルのボディケアブランドであるサボン(Sabon)が、ウルタ・ビューティーでの販売を開始した。このように、この2社との戦略的提携に注力を注ぐ新興D2C美容ブランドや大手美容ブランドは後を絶たない。

オンラインプラットーフォームの参入が容易では無い理由

顧客は、新興のデジタル・プラットフォームよりも、馴染みのある信頼できる実店舗で美容製品を購入することを好む傾向も否めない。顧客とブランドを結ぶロイヤルティは、長い時間をかけて構築されていくものであり、プレステージ・ビューティ業界ではその傾向がさらに色濃く有るだろう。

それに加えて、美容業界では、「実店舗に訪れて製品を試す」という体験も大きなウェイトを占めている。特に潜在的な購買客は、初めて使用する製品の購入を決める前に、実際に手にとって製品に触れ、自分に合っているかどうかを判断することが多い。特に、製品の香りやテクスチャー、色の発色は非常に重要な要素だ。その為、どんなに先進的なバーチャル試着技術が統合されたとしても、多くの買い物客は、購入前に実際に商品と触れ合うことを好んでいる。

セフォラの店内でテスターを眺める顧客

美容市場がますます拡大していることは確かであり、企業や投資家にとって大きな機会があると言える。マッキンゼーの統計によると、2022年に約4300億ドルの収益を上げた美容市場は、更なる消費者の関心と需要の高まりを反映しています。しかしその一方で、競争も激化しており、その中で勝ち上がっていく為には、革新的なアプローチ、消費者との深い関わり、持続可能なビジネスモデルの構築など、幅広い側面に対する戦略が必要だ。

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