最速最多のダウンロード数を記録するスレッズ(Threads)|スレッズの将来的な成功はいかに

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スレッズ(Threads)の勢いが止まらない。今月5日(米国時間)にMeta社からリリースされた新アプリ「スレッズ」は、この2日間でユーザー数を驚異的に伸ばし、7月7日の現時点で世界のユーザー数が7300万人を超えている。

アプリのリリースから1時間半でユーザー数が100万人を超え、マーク・ザッカーバーグが就寝時には1000万人まで増え、さらに翌朝目覚めた時点では、3000万人のユーザーが集まっていた。この数字は、数ヶ月前に登場したChatGPTが達成した「5日で100万回」という記録をも塗り替え、歴代のアプリの中で過去最短で最多のユーザー数を集めたアプリとなった。

スレッズとツイッターの違いは?

「スレッズ」は、インスタグラムのアカウントでログインすることが出来るため、すでにインスタで繋がりのある人々とスレッズ上で簡単に繋がることができる。「テキストベースの会話型アプリ」であり、ユーザーインターフェイスがツイッターと酷似していることから、ツイッターキラーと呼ばれているが、具体的な機能は全く同様というわけではない。

例えば、ツイッターでは、1ツイート150文字までという字数制限があるが、スレッズの場合は500文字まで呟くことが可能だ。他の人のコメントに「いいね!」を押したり、再投稿したりする機能もあり、スレッズでの呟きをインスタストーリーでフォロワーに共有することも出来る。また、ツイッターが1投稿で写真4枚までなのに対し、スレッズは10枚まで。動画もツイッターが2分20秒までに対し、スレッズでは5分まで可能となっている。スレッズはまさに、インスタグラムのビジュアルで魅せるエッセンスを織り交ぜながら、ツイッターユーザーが好んでいたテキスト機能も同時に楽しめる、という仕様なのだ。

それ以外にも、ユーザーが自分の投稿に返信できる人をコントロールしたり、特定の単語をフィルタリングしたり、他のプロフィールが自分をフォローしないようにブロックしたり制限したりすることも出来る。リリースでメタ社は、スレッズを 「前向きで生産的な会話を可能にするために 」構築したと述べている。

meta threads app

ツイッターはイーロン・マスク(Elon Musk)に440億ドルで買収されてから、従業員の解雇や独裁的な経営判断など、数々の波乱の展開を乗り越えてきた。近日では、悪質業者によるデータスクレイピングを制限するため、ユーザーが1日に閲覧できる投稿数を制限すると発表。その変更によって、さらに既存ユーザーの不満を加速させていた。また、ツイッターコミュニティには、ヘイトスピーチや政治的過激主義などの主張が目立ち、批判や攻撃的な意見が飛び交う場というネガティブなイメージもあった。

近年では、ファッション業界を始めとする多くの企業やブランドがツイッターでの公式アカウントを閉鎖し。デジタルコンテンツ配信は、インスタグラムとTiktokの2つに傾倒している動きが見られていた。しかし、スレッズはテキストベースと謳いながらも、ビジュアルコンテンツの発信にも長けている特性を持っている。また、元々画像や動画ベースのインスタグラムにいる既存のアクティブユーザーをそのままプラットフォームに引き継ぐことが出来るという点で、ファッション業界とは相性が良いと言えるだろう。

また、ツイッターでの過激なコンテンツ配信を好むユーザーよりも、親しい人たちと日常の一部を気軽に呟ける交流の場所として、生まれたばかりのコミュニティでありながら、すでにユーザーの間にポジティブな雰囲気が流れている。

スレッズに向けられる今後の課題

好調な滑り出しを切ったスレッズ(Threads)だが、もちろん改善すべき点もある。一部ツイッターユーザーからは、スレッズがツイッターの代替としての存在を望むのであれば、よりツイッターの既存機能に寄せたフィードの再構築が必要であるだろうと言われている。

また、スレッズの現プラットフォームはアルゴリズムによるフィードを使用しており、ユーザーがフォローしていないアカウントからのコンテンツも多く表示される仕様になっている。企業の広告などは表示されないが、知らない人のコンテンツ表示について一部のユーザーからは、「本当にみたいコンテンツの妨げになっている」と言う声が上がっている。これに対し、インスタグラムの責任者であるアダム・モセリは、「フォローされているアカウントのみを表示するオプションが、今後スレッズに追加される可能性があること」を示唆した。

スレッズのバズの先にある未来

果たしてスレッズの人気は今後どうなっていくのだろうか。歴代最速で最多のダウンロード数を記録したからと行って、その勝利は未だ確実なものではない。

例えば、2021年の1月末から2月にかけて、大きなブームを巻き起こした音声チャットアプリのクラブハウス(Club House)が良い例だ。2021年1月22日に「クラブハウスの時価総額が1000億円と評価された」というニュースが流れたことで、日本でもビジネス界隈の人々に注目され、瞬く間にその他大勢のユーザーにもその人気が拡散された。ちょうどコロナ禍の緊急事態宣言下という状況が重なり、家にいながらも世界中人々と同時に会話で繋がれるプラットフォームはとても魅力的だった。また、音声アプリという新感覚、招待権限があるユーザーのみ参加可能というエクスクルーシブ性がさらにその人気を加熱させた。

しかし、そんなブームも束の間、クラブハウスは収益化にはを不向きであることが明確になると、異様とまで見えたブームは1ヶ月弱であっという間に収束してしまった。

その他にも、2017年の後半には、当時のフェイスブック社がはダイレクトと呼ばれるスナップチャットのライバルのテストを始めたが、2019年に閉鎖となった。またZ世代を中心に人気を博していると言われていた「BeReal」も、現在は苦戦している。

米国では毎日新しいアプリが生まれては消えを繰り返しており、その最大の理由がアプリ立ち上げ初期のユーザーの少なさだ。ソーシャルメディアのプラットフォームは、多くの人が集まる場であることに価値があり、そのネットワーク効果で成長を遂げる。コンテンツやアクティビティがほとんどないプラットフォームでは、新規のユーザーが取れても、長期的にアクティブユーザーが定着する可能性は低いだろう。

その点スレッズは、すでに20億人の月間既存アクティブユーザーを持つインスタグラムのアカウントと連動させていることで、他のアプリと比較し圧倒的優位性がある。この2日の間に、ほとんどの企業がスレッズの公式アカウント上で発信を始めており、著名人やインフルエンサーも積極的に新しいスレッズのアカウントのフォロー呼びかける発信を行なっている。引き続き、スレッズが現在獲得したユーザーを惹きつけ、保持することが出来れば、2022年6月末時点で2億3800万人のデイリーアクティブユーザーを報告していたTwitterにツイッターを大きく引き離していけるだろう。

また、各業界では、メタが仕掛けたこのアプリが、今後どのようにコミュニティとして発展し、自分たちのビジネスに利益をもたらしていくのかについて、注目すべきである。

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