2月26日(現地時間)、フェンディ(Fendi)はブランド創立100周年を迎え、記念すべき2025年秋冬コレクションを発表した。ショーの舞台となったのは、ローマに新設された「Spazio FENDI」。この空間は、フェンディの歴史が息づくヴィア・ボルゴニョーナのブティックとアトリエのサロンを再現したものだ。
豪華なカーペットが敷かれ、シャンデリアが煌めく室内には、クラシックなディヴァンが並び、まるで時が巻き戻されたかのような雰囲気が広がる。ここはかつて、フェンディ家の2代目であるアルダ(Alda)、アンナ(Anna)、カルラ(Carla)、フランカ(Franca)、パオラ(Paola)の5姉妹がともに働き、遊び、ブランドの礎を築いた空間を思い起こさせる。
そんな歴史の香り漂う舞台で、シルヴィア・ヴェントゥリーニ・フェンディ(Silvia Venturini Fendi)は、5世代にわたるフェンディの遺産を讃えつつ、未来へと続く新たな物語を披露した。

世代を超えて受け継がれるフェンディの遺産
「フェンディは未来を思い起こさせてくれます。物理的なアーカイブを掘り下げるのに時間をかけたくはありませんでした。私にとって『フェンディ100』とは、現実の、あるいは想像上の、フェンディが何であったか、そして今日のフェンディが何を意味するのかという、私自身の記憶についてなのです」
シルヴィアのこの言葉どおり、今回のコレクションは過去を単に振り返るものではない。ブランドが積み重ねてきた感覚や精神を、現代の視点から再構築し、新たなフェンディの物語として紡ぎ直している。
ショーの幕を開けたのは、シルヴィアの孫であるダルド&タツィオ・ヴァスチェラリ・フェンディ(Dardo & Tazio Vascellari Fendi)の7歳の双子。彼らが身に纏っていたのは、故カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)が1967年にデザインし、7歳のシルヴィア自身が着用した乗馬用アンサンブルのレプリカだ。扉を押し開ける幼い彼らの姿は、世代を超えて受け継がれるフェンディの遺産そのものを象徴し、会場を温かな感動で包んだ。
革新とエレガンスが交差するコレクション
クラシックなサルトリアル技術と現代的な感性が交錯し、タイムレスなエレガンスが際立つ2025年秋冬コレクション。ファーストルックでは、襟を高く仕立て、ゴールドのベルトでウエストを引き締めたファーコートが登場。まるでドレスのように流れるシルエットが、エフォートレスな洗練を漂わせる。
また、かつてミンクやセーブルにのみ施されていたインターシャ、ハニカム、ゲロナート(Gheronato)パッチワークの技術をシアリング素材に応用し、新たなラグジュアリーの表現を提示。卓越したクラフツマンシップが生み出す豊かな質感と奥行きが、フェンディの革新性を体現した。


今シーズンのシルエットでは、オーバーサイズで丸みを帯びたワンピースやコートを、極細のベルトでウエストを引き締めるスタイリングが主役となった。ゆったりとしたフォルムに繊細なウエストマークを加えることで、柔らかさの中にエレガンスを宿し、フェンディならではの洗練さが滲み出る。
また、ショーの中盤では、眩いビジューやスパンコールを散りばめたドレスやスカート、ニットトップ、パンプスが次々と登場。煌めく装飾が光を受けて輝きを放ち、まるで夜の祝祭を思わせるような高揚感を演出した。
その他、サテンのバルザスカート、フリルを施したコロラジャケット、マーブル調のプリーツドレスなどには、ローマの壮麗な建築や文化へのオマージュが込められている。カラーパレットには、夕暮れ時のローマを映し出すグラデーションが広がり、フォレストグリーンやペトロールブルーから、シナモンやスカーレットへと移り変わる。その色彩の変化は、まるでローマの空が刻一刻と表情を変えていくような幻想的な美しさを湛えていた。





アウターウェアもまた、フェンディの象徴的な要素のひとつとして、その存在感を放っていた。ローカットのメンズコート、サテンの裏地を施したブレザー、オーバーサイズのラムスキントレンチコートなどの多彩なバリエーションが揃い、それぞれに洗練された仕立ての妙が光る。
フェンディの伝統的なシアリングストールも、ジェムトーンのカーディガンやシアーブラウスとレイヤードされ、クラシックでありながらも軽やかなモダニティを演出。現代的なラグジュアリーが、コレクションの随所に息づいていた。




フェンディを象徴するアクセサリーの進化
アクセサリーでは、彫刻のような曲線美を描くフォルムの「フェンディ ジャーノ(FENDI Giano)」バッグがデビュー。また、2005年に登場した「スパイバッグ(Spy Bag)」が、ソルベカラーのシアリング素材で復刻し、新たな魅力を纏って登場した。さらに、アイコニックな「バゲット(Baguette)」と「ピーカブー(Peekaboo)」は、ディスコ調のスパンコールやエキゾチックレザーが取り入れられ、タイムレスな魅力に新たなエネルギーが吹き込まれた。
ジュエリーは、デルフィナ・デレトレズ・フェンディ(Delfina Delettrez Fendi)が手掛けたシャンデリアピアスやスネークチェーンのチョーカー、スターリングシルバーのオベリスクが登場。ミニマルなコーディネートに詩的な耽美性と幻想的な魅力を添え、コレクションの世界観をより深く彩った。

100年を超え、未来へと進むフェンディ
伝統に根ざしながらも進化を続けるフェンディの美学が、余すとこなく凝縮されていた「2025年秋冬コレクション」。これまで受け継がれてきたDNAは、時を超えてもなお変わることなく、挑戦と進化を続けるブランドであることを証明してくれた。
フェンディ 2025年秋冬の全てのルックは、以下のギャラリーから。
フェンディ 2025-26年秋冬 ウィメンズ・メンズショー
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