3月7日(現地時間)、サラ・バートン(Sarah Burton)によるジバンシィ(Givenchy)のデビューコレクションが、パリ ファッションウィークで発表された。2023年9月にバートンがアーティスティック・ディレクターに就任してから半年余り、彼女はブランドの伝統を継承しつつも、新たな解釈を加えたコレクションを披露。そこには、ブランドのルーツに敬意を払いながらも、未来へと進化するジバンシィの姿があった。
過去と未来が交差する、ジバンシィの原点回帰
バートンの創造の源となったのは、ユベール・ド・ジバンシィ(Hubert de Givenchy)が1952年に発表した初のコレクションだった。その原点に立ち戻ることで、彼女は構築的なシルエットやカットの美しさ、そしてアトリエのクラフツマンシップに新たな息吹を吹き込んだ。
特筆すべきは、パリのジバンシィ本店の改装中に偶然発見された収納棚で、そこには70年以上もの時を超えた1952年のカリコパターン(仮縫い用の布地)が眠っていたという。この歴史的な遺産は、バートンにとって単なる発見ではなく、ブランドのDNAに再び光を当てるインスピレーションとなったのだった。
「ミニマリズム × 構築美 = 洗練さ」
ショーのファーストルックは、その精神を象徴するかのようなブラックのフィッシュネットキャットスーツから始まった。胸元には「Givenchy Paris 1952」のロゴが刻まれ、シアーな生地の下にはブラとショーツが透ける。潔く削ぎ落とされたミニマリズムが、モダンな女性のエレガンスを映し出した。
テーラリングでは、力強さと官能性が交差する。オーバーサイズのスーツは、構築的なショルダーラインと引き締まったウエストのコントラストが際立ち、動きのあるシルエットとクチュールの精巧な仕立てが融合。コートやジャケットには、繭のように包み込むコクーンシルエットを採用し、ボリュームとシャープなラインの絶妙なバランスが彫刻的な美を描き出した。





エレガンスと大胆さの調和
一方、ミニマルなキャットスーツや繊細なレースをあしらったマイクロ丈のドレスは、クラシカルなエレガンスに大胆な女性らしさを掛け合わせたもの。流れるようなドレープと計算されたカットが、着る人の動きに呼応するように軽やかに揺れる。
また、フローラルモチーフやチュール、大ぶりのビジューやパールなどを巧みに取り入れることで、ドラマティックな装いと軽やかな動きを共存させた。バートンが目指したのは、ジバンシィをまとう女性たちが、自らの魅力を自在に操ることのできるスタイルだ。
「私は、現代女性のあらゆる側面を映し出したい。強さも、脆さも、感情の知性も、自信に満ちたパワーも、セクシーな魅力も——そのすべてを表現することが重要なのです」と、バートンはショーノートに綴った。








さらに、2025年秋冬コレクションでは、ボディダイバーシティを取り入れたキャスティングも注目を集めた。さまざまな体型や個性を持つモデルたちがランウェイを歩くことで、ジバンシィの女性像はよりリアルで、多面的なものへと進化している。
サラ・バートンが切り拓くジバンシィの未来
アトリエの技巧が宿る精緻なシルエット、モダンなフェミニニティを映し出すディテール、そして多様な女性の魅力を讃えるデザイン——サラ・バートンによる2025年秋冬コレクションは、ブランドの伝統を受け継ぎながらも、彼女の視点を加えることで、未来へと続く新たな可能性を示した。これは単なるリバイバルではなく、進化し続けるジバンシィの新章の幕開けだ。
ジバンシィ 2025年秋冬コレクションの全てのルックは、以下のギャラリーから。
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