キム・カーダシアンの補正下着ブランド、スキムス(SKIMS)を40億ドル事業に躍進させたマーケティング戦略

SKIMS

キム・カーダシアン(Kim Kardashian)が共同設立したアパレルブランドのスキムス(SKIMS)の人気は衰えを知らない。

同ブランドは、設立からわずか4年で、評価額が4倍のユニコーン企業へと成長した。2022年に投資家が同社に与えた評価額は、32億ドルだったが、今年の新たな資金調達ラウンドでは2億7000万ドルを調達し、その評価額は40億ドルに達する。

スキムスは2019年6月に、キム・カーダシアンとスウェーデンの起業家イェンス・グリード(Jens Grede)によって設立された。立ち上げ時は、体にフィットする服を着るための補正下着を専門に販売する会社としてスタートした。

ウォール・ストリート・ジャーナル誌のビデオで、キム・カーダシアンはスキムスを立ち上げた経緯について、自分の肌の色に合うシェイプウェアをいつも見つけることができなかったので、様々な体型、肌の色、年齢の女性に選択肢を提供する為だったと説明。

「私は本当に、自分で切り刻んだり、自分で染めたりしていたデザインをすべて取り入れた、自分のシェイプウェアを発売したかったのです」と語った。

しかし今では、ルームウェアや水着など、さまざまな衣料品カテゴリーに進出し、補正下着はもはや売上の大半を占めていないという。また、今秋にはメンズ衣料品にも進出する予定だ。かつては消費者への直接販売で知られていた同社だが、来年にはロサンゼルスとニューヨークに初の旗艦店をオープンすることを計画している。

顧客のコミュニティとなっているスキムスのソーシャルメディア

同社のオンライン顧客の約15%は米国外からで、顧客全体の70%近くがミレニアル世代かZ世代と言われている。現に今年5月に、ニューヨークの名所ロックフェラーセンターで行われた期間限定のポップアップストアには、連日数時間待ちの長蛇の列が出来ており、そこに並んでいたほとんどの客層がミレニアル世代とZ世代であることは一目瞭然だった。

また、InstagramやTiktokなどのソーシャルメディア・チャンネルでの発信も、スキムスにとって重要な集客ツールである。インスタグラムで526万人以上のフォロワーを持つ同ブランドは、公式アカウントで新製品の発表やソーシャル・キャンペーンを告知している。投稿には毎回フォロワーから多くのコメントが寄せられており、購入者がどんな商品が欲しいかフィードバックをしたり、商品の再入荷時期を問い合わせたりするカスタマーサービスとしてのチャンネルにもなっているようだ。

さらにTikTokでも同ブランドは、120万人のフォロワーを持っている。TikTokの公式アカウントでは、実際の顧客たちが作ったユーザー生成コンテンツが主に投稿されており、そこで顧客からの使用感やレビューが盛んに交換されている。誰でもがブランドの公式アカウントに投稿出来るという設定の為、中にはスキムスに似た偽物の製品をシェアするユーザーもいる。しかしこれがまたTikTokの人気ニッチであり、オリジナル商品の知名度と需要を牽引しているというから驚きだ。

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実際のユーザーが投稿しているTiktokのSKIMS公式アカウント

入手困難な希少性を付加価値に

こうしたソーシャルメディアでの顧客目線に立ったコミュニティ作りは、間違えなく同ブランドの主力なマーケティング戦略の一つだろう。

また、同ブランドはEメールマーケティングも販売促進に積極的に導入している。商品の入荷を知らせるメーリングリストに登録した顧客には、平均して週に5通、新商品の入荷や人気商品の再入荷を知らせるメールが届く。というのも、スキムスの商品は、発売と同時に売り切れになり入手困難となることが多い。その為、ブランドの製品には希少性という付加価値も加わり、多くの人々がそれを手に入れようと熱狂するのだ。

買い逃しをした人たちへ向け、Eメールで商品再入荷のアラートを送り知らせることで、顧客はより詳しくブランドをフォローするようになり、商品が入手可能になり次第すぐに購入するようになるのだ。さらに、スキムスは小売店とのコラボレーションや購入への直接アクセスポイントなどを知らせるニュースレターの配信も行っている。

ウェリントン・マネジメントを中心に新たな展望を開拓

スキムスの最高経営責任者であるグリード氏は、同社は現在黒字であり、今年の売上は7億5000万ドル(2022年の5億ドルから増加)の見通しであると発表。また、昨年1年間で、1,100万人がこのブランドの人気商品を購入するためにウェイティングリストに加わったという。

経営陣がここ数カ月で資金調達を開始した際に投資家を惹きつけた要因について、グリード氏は「この成長軌道と人気」が要因だと語る。今回のラウンドを主導したのは、資産運用会社のウェリントン・マネジメント(Wellington Management)であり、他の参加企業には、Greenoaks Capital Partners、既存の支援者であるD1 Capital PartnersとImaginary Venturesが含まれる。

「スキムスはブランド設立以来、かつてない勢いを維持しています。私たちは、この重要な成長段階をサポートするために、このブランドと提携できることに興奮しています。」とウェリントンのプライベート投資部門共同責任者マイケル・カーメン(Michael Carmen)氏は声明で述べた。

こうしたスキムスの成功は、スキンケア、フレグランス、そしてプライベート・エクイティ会社に至るまで、カーダシアンが所有する複数の事業の中でも、最も抜きん出ているものだろう。2021年の資金調達ラウンドの後、カーダシアンすでに億万長者の仲間入りを果たし、現在も同社の筆頭株主として、グレッド氏とともに株式の過半数を所有している。

株式公開企業を目指して

現在、2億7000万ドルを調達したスキムスの評価額は40億ドルにまで膨れ上がっており、同時に、この事業の投資を主導するウェリントン・マネジメントは、株式公開前の企業に投資することで知られている。そうした背景を踏まえると、「このアパレルメーカーは具体的にいつ株式を公開する予定なのか」という疑問が生まれるだろう。

グリード氏は、自分とカーダシアンは株式公開について急いではいないことを言及したが、投資家たちがここ数カ月、消費者向けのビジネスに関心を示していることを指摘。また、株式公開は会社の目標のひとつであることに変わりはないという意思を述べ、「将来のある時点で、スキムスは株式公開企業になるに値する」とコメントした。

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