6月19日(現地時間)、フィレンツェのマッジョ・ムジカーレ・フィオレンティーノにて、「ニコロ パスクアレッティ(Niccolò Pasqualetti)」が2026年春夏メンズコレクションを発表した。自身初となるメンズコレクションの発表は、ピッティ・イマージネ・ウオモ(Pitti Immagine Uomo)108のゲストデザイナーとして公式スケジュールに組み込まれた形で開催。全33体に及ぶルックを通じて、性別、時間帯、機能といった既存の枠組みを意図的に曖昧にし、衣服が本来持つ「変容する力」に光を当てた。
コレクションは、ミリタリー、ワークウェア、スポーツウェア、そしてテーラリングといった、いずれも規律を感じさせる衣服の言語を出発点としながら、それらを解体し、断片として再構築することで、まったく新しいフォーマットを創出している。
たとえば、ファティーグパンツの上から覗くスイムウェア風のウエストバンド、シアーなシャツの下に重ねられたタンクトップ、重厚なウールと、乾いた顔料のような質感をもつコットンの対比など。一つひとつのスタイリングが、既成概念に揺さぶりをかけ、統一感よりも対照によって引き出される美しさが、見る者を惹きつける。
素材の選定においても、その思想は明確だ。ロー・デニムには刺し子を思わせる繊細な刺繍が施され、粗さと技巧が同居する。シルクやリネンは、ムラ感を残したコットンと並置され、レーザーカットされたスエードはカモフラージュ柄を想起させつつも、模倣にとどまらない独自の存在感を放っていた。
境界線の再編成による構築美
さらに構造の再編は、シルエットの細部にまで緻密に施されている。膝下で大胆に割かれたトラウザー、スカートのように広がるショートパンツ、肩からずり落ちるシャツ、ウエストをひねるように設計されたトップス。いずれのピースにも、着方の自由や身体との関係性を問い直す視点が込められている。非対称なフォルムやあえて露出を加えたパターンは、即興性と計算性を絶妙なバランスで両立させていた。
声高に主張することなく、細部に込められた工夫と構築の妙によって、見る者の感性を静かに刺激したニコロ パスカレッティの2026年春夏メンズコレクション。完成された“美”ではなく、変化や揺らぎを含み込む“開かれた衣服”─ それこそが、現代における個のスタイルを形成する基盤なのではないか。
ニコロ パスカレッティ 2026年春夏メンズコレクションのすべてのルックは、以下のギャラリーから。
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