2月15日(現地時間)、プライベート ポリシー(Private Policy)は、ニューヨーク ファッションウィークにて、2026年秋冬コレクションを発表した。
会場となったのは、ニューヨークの歴史的ライブハウス「ウェブスター・ホール(Webster Hall)」。旧正月という“再生”と“継承”を象徴するタイミングで発表された今季は、19世紀にアメリカ大陸横断鉄道を築いた中国人労働者の歴史を出発点に、アジア系移民の労働の軌跡を現在へと接続するコンセプトを打ち出した。
ワークウェアという記憶
コレクションの核をなしたのは、ワークウェアの再解釈だ。補強された縫い目、マルチポケット構造、耐久性を想起させるレザーやヘビー素材。ブラウンのレザージャケットにミニスカートを合わせたルックは、鉄道労働者の機能服を思わせながらも、シルエットは都会的に研ぎ澄まされている。無骨さと洗練のあいだを往復するバランスが、ブランドらしいジェンダーレスな緊張感を生み出していた。
一方で、赤いレザーのセットアップは強烈な存在感を放つ。リベットのディテールが身体のラインに沿って配され、まるで労働の痕跡そのものを装飾へと転換したかのようだ。ここでは“耐久”が“権威”へと変換されている。



1980年代の職業的エレガンス
そして、今季のもう一つの軸は1980年代。アジア系アメリカ人が主流社会の労働市場へと進出し始めた時代であり、プロフェッショナルな装いが自己防衛であり戦略でもあった時代だ。
パワーショルダーやシャープなテーラリング、ペンシルスカートを思わせるラインは、オフィスという制度空間を想起させる。しかし、シルクのような光沢を帯びた淡いブルーのミニドレスやロングシャツドレスは、硬質な構造の中に柔らかさを忍ばせる。そこには、同化のための規律と、自己表現への欲望が同居している。
“労働”は肉体的なものだけではない。感情的、心理的、制度的な労働——見えにくい努力が、このコレクションでは素材とシルエットによって可視化されている。



アメリカン・ウエストの色彩
カラーパレットはアーストーン、錆びた赤、オフィスブルー、そして砂漠のようなベージュ。グリーンのカーディガンに“NEW YORK”の文字を配したルックは、都市のアイデンティティと移民の物語を重ね合わせる象徴的な一着だ。
また、チェック柄のミニドレスやウエスタン調のセットアップやドレスは、アメリカ西部を思わせる色やムードを取り入れながら、それをアジア系移民の視点から再構築する。過去に築かれたインフラの上に、いま新たな文化的存在感が重なっていく構図が見える。



“見えなかった存在”の可視化
プライベート ポリシーの強みは、単なる社会的メッセージに留まらない点にある。思想は、服の構造に落とし込まれて初めて説得力を持つ。今季は特に、ユーティリティなフォルムをシルク調やハイシーン素材で再解釈することで、「かつて沈黙に埋もれた労働」に光を当てる視覚的コントラストを生み出していた。
19世紀の鉄道労働と1980年代のオフィスカルチャーを並置することで描かれたのは、労働の消失ではなく、その変容と進化である。身体的なインフラ建設から、感情的・知的・文化的なインフラの構築へ。プライベート ポリシーは、その連続性をランウェイ上で力強く示した。
線路は続いている。
そして今、私たちはようやく“見える存在”となった。
プライベート ポリシー 2026年秋冬コレクションの全てのルックは以下のギャラリーから。
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