楽天ファッションウィーク東京 2025年春夏 ハイライト②オー ゼロ ユー、セイヴソン、ミューラル

Rakuten Fashion Week Tokyo Spring/Summer 2025

9月2日(月)〜9月7日(土)の6日間に渡り、楽天ファッションウィーク東京 2025年春夏コレクションが開催された。ショーのメイン会場には、例年同様、渋谷ヒカリエと表参道ヒルズが選ばれ、今シーズンは計33ブランドが参加し、そのうち26ブランドがフィジカルでの発表、7ブランドがデジタル形式での発表を行なった。

本記事では、「楽天ファッションウィーク東京 2025年春夏」に参加した計33ブランドから、OSFが抜粋したデザイナーたちの最新コレクションを、ハイライト①に引き続き、厳選して紹介する。

①オー ゼロ ユー(O0u

オー ゼロ ユー(O0u)は今回、「楽天ファッションウィーク東京」に初めて参加し、東京・江東区のテレコムセンタービルで2025春夏コレクションを発表した。テーマは「LIVING IN A CIRCULAR WORLD」。自然体の美しさと持続可能性を軸に、「サークル=循環」を通じて地球、資源、文化、そして私たちの日常が調和し、循環する様子を描き出した。

ブランドが提案するのは、「新しい、ふつう」「新しい、かっこよさ」を軸としたライフスタイルだ。再生ポリエステルや天然素材、リサイクル原料を取り入れた全アイテムには、自分にも地球にも誠実に向き合い、日常の中に自分らしさを見出すというブランドの哲学が反映されている。今回のコレクションは、ファッションを通じて「循環」と「調和」という明確なビジョンを体現するものとなった。

柔らかなデザインが描く調和の美
デザインの核となる柔らかな曲線や円形のモチーフは、穏やかさと調和の象徴として、コレクション全体に統一感を与えている。カラーパレットは、クリーンなオフホワイトから優しげなパステルカラー、さらに色褪せないクラシックな色合いまで、多様な表情を持つ。これらの色彩が、自然の持つ柔らかさと力強さを表現している。

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さらに、流れるようなドレープや、立体感を生むギャザー、そしてフリルのディテールが、スタイリングに軽やかな動きをプラスする。ヌードカラーのフォーマルなジャケットやトップスには、オーガンジーのレイヤーが薄い膜のように重ねられ、エアリーな質感と洗練された印象を加えていた。

モデルが抱えるように持っている丸みを帯びたレザーバッグは、日常使いに適したエレガントさを備え、また、円筒型バッグに添えられた大きなぬいぐるみのチャームは、遊び心を加えることで、小物に特別な存在感を与えていた。

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Courtesy of O0u

時代を超えたエレガンスを再構築
こうした時代を超えて愛される定番アイテムたちは、オー ゼロ ユーの掲げる「循環」と「調和」によって、現代的な日常着としての新たな命を吹き込まれた。同時にそれは、サステナブルな素材や洗練されたデザインを通じて、現代のエレガンスを再構築するブランドの挑戦でもあるだろう。

 

② セイヴソン(Seivson

台湾人デザイナーのヅゥチン・シン(Tzu Chin Shen)が率いるセイヴソン(SEIVSON)は、2025年春夏コレクションで「TRACE “痕跡”」をテーマに掲げ、社会に深く切り込むクリエイションを発表した。現代社会に蔓延する矛盾や真実の歪曲。それらが女性の身体に残す「痕跡」を、ファッションを通じて象徴的に表現したのだ。

「痕跡」を描く多層的なデザイン
コレクションは、まるで破れたテープを巻きつけたかのようなボディコンシャスなアイテムからスタートした。そこから、セイヴソンが得意とする解体と再構築の手法を取り入れたデザインが展開される。裏返しにしたような構造のジャケットや、異なるパターンをつなぎ合わせたアウター、さらに流れるようなボリューム感を持たせたシルエットが目を引く。

これらのデザインは、女性の身体のシルエットを際立たせながらも、布地の重なりやダメージ加工を巧みに活用し、「痕跡」というテーマを視覚的に描写していた。

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また今回のコレクションでは、従来の素材に加え、京都の西陣織やエコ素材を採用する新たな試みが導入された。深いダメージ加工が施されたアイテムには、手作業による独特の風合いが加えられ、衣服に生命力と個性が宿される。

これにより、単なるファッションアイテムではなく、一つ一つがアートピースとしての存在感を持つ仕上がりとなったのだ。

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Courtesy of SEIVSON
Courtesy of SEIVSON

「傷と癒し」を超えた哲学的アプローチ
2025春夏コレクションを通じて、現代社会の矛盾を直視し、その「痕跡」をクリエイションへと昇華させたセイヴソン。傷と癒し、そして進化という普遍的なテーマを通じて、社会が抱える課題を正面から捉え、それを洗練されたデザインに落とし込む手法には、ブランドの哲学と強い信念が感じられる。

美しさと矛盾が交錯する現代社会において、ファッションの可能性を探求し続ける同コレクションは、観る者に深い思索を促しながら、社会との新たな対話を感じさせたものだった。

 

③ミューラル(MURRAL

ミューラル(MURRALは今シーズン、POLA青山ビルディングのロビーフロアを舞台にランウェイを開催した。今季のテーマは「SEEM」。「〜のように見える」または「〜と思える」と解釈できるこの言葉には、美しさそのものへの問いと、それを捉える視点の多様性が込められており、長年、花を創作の中心に据えてきたミューラルが、改めてその美の本質を問い直し、花に秘められた優美さと奇妙さを探求したコレクションと言える。

着想源はモノクロームの植物図鑑
コレクションのインスピレーションとなったのは、ドイツの植物学者であり写真家のカール・ブロスフェルト(Karl Blossfeldt)が1928年に出版した植物図鑑『芸術の原型』である。この図鑑に収められたモノクロ写真は、肉眼では見逃されるような植物の細部を浮き彫りにし、「優美」と「奇妙」という相反する美を映し出すものだ。デザイナーの村松祐輔と関口愛弓は、この両義性に着目し、「SEEM」というテーマに落とし込んだ。マーブル柄のように見えるプリントや、抽象的な植物モチーフのデザインは、まさに『芸術の原型』からインスピレーションを得たものである。

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多様な素材と「SEEM」の解釈
レザーのように見えるサテン地や、絡まる蔦のように見えるビーズ編みのアイテムは、「〜のように見える」というテーマを的確に体現している。一見すると異なる素材や形状に見えるものを、ミューラルらしいクリエイションへと昇華させることで、アイテム一つ一つが視覚的な楽しさと哲学的な深みを持つ仕上がりとなっている。

また、刺繍やプリントに込められた細やかなディテールは、花が持つ象徴性と無意識の美を巧みに表現しており、光と影、優雅さと奇妙さ、均整と崩れの間で揺れ、自然そのものの複雑さと魅力を映し出す鏡のようなデザインだ。

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コレクションの後半には、艶やかなミントグリーンのルックが並び、特に、ゴールドやヴァイオレット、ホワイトを散りばめたロングスカートと、ロングドレスが目を引いた。華やかさと静謐さを見事に融合させたこのミントグリーンのルックは、抽象的な植物模様をまとい、優雅さと静けさを兼ね備えたフィナーレを演出した。

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Courtesy of MURRAL

視覚的な美と哲学的な問いの融合
ミューラルの2025春夏コレクションは、ファッションの枠を超え、芸術的探求としての多くのインスピレーションを与えてくれたと感じる。視覚的な美と哲学的な問いを融合させた同コレクションは、美しさを再発見するだけでなく、まさに、私たち自身が持つ美の概念を揺さぶる機会であった。

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