9月10日(日)まで開催されている全米オープンテニスにて、高級ジュエリーブランドの「ティファニー(Tiffany & Co.)」は、スナップ社(Snap Inc.)及び、全米テニス協会(USTA)と提携し、来場者へ没入型のAR(拡張現実)ミラーを用いたインタラクティブな体験を提供している。
ティファニー x スナップ社のAR体験
会場に設置された「ティファニー」の体験型ブースでは、来場者がハイテクARミラーを覗き込むと、ダイヤモンドがちりばめられたデジタルテニスラケットでバーチャルスイングをして遊んだり、優勝トロフィーに触れることが出来る。鏡を通して、実際にバーチャルアイテムを持っているような写真を撮ることも可能だ。
ティファニーは、スナップ社がエンタープライズ向けに提供している拡張現実サービス「AR Enterprise Services(以下、Ares)」を、今回の全米オープンでのインスタレーションで、初めて採用した。Aresは、企業が自社ウェブサイトやアプリ、ライブに没入型のAR技術を統合するのを支援するサービスであり、これを導入すると、自社のアプリでもAR試着を容易に提供することができる。
また、ティファニーが物理的なARミラーを導入したのも今回が初めてだ。これまで多くの小売店舗でスマートミラーが導入されてきたが、Aresを使用するスナップ社のARミラーでは、物理的なスクリーン用に特別に設計された技術が含まれており、消費者の反射にインタラクティブなデジタル要素を表示するだけでなく、内蔵カメラで画像撮影をすることも出来る。また、こうした新世代ARの活用は、ブランドと消費者の関わり方を変革し、エンゲージメントと収益の増加を促進するのに最適だ。
ティファニーはスナップ社との長年にわたる関係を築いており、これまでもARを積極的に採用してきた。同社は、デジタルオブジェクトに光を反射させることでARのリアリズムを向上させるスナップ社のレイトレーシング技術を活用した最初のブランドだ。昨年の夏にロンドンのサーチ・ギャラリーで開催されたアーカイブ展でも、ティファニーはARを使用し、有名なティファニーのイエローダイヤモンド(128.54カラット)をバーチャルで試着出来る体験を提供した。また、今年2月には、顧客がティファニーの「Lock」シリーズのブレスレットをAR利用によって、デジタルで試着したり、購入したりすることが出来るようにした。
ティファニーは、1987年から全米オープンのシングルスとダブルスのトロフィーを作っているが、2023年の全米オープンテニスの舞台裏で輝きを放つティファニーのARミラー体験は、顧客との新しい対話の形を生み出し、ブランドのプレゼンスを確実に高めている。
ファッション界で高まるAR活用: 試着からランドマークまで
近年、実店舗を持つファッションブランドでは、ARの応用で店舗とオンラインの両方の試着プロセスを効率化したいというニーズが増加を辿る。
昨年9月のニューヨークファッションウィーク期間中には、ARファッションプラットフォームのゼロテン(ZERO10)が、ソーホーにあるクロスビースタジオにて、初のAR統合リテールポップアップを立ち上げ話題となった。会場では、来場者はゼロテンのARファッションテクノロジーによって作られた5つのデジタルアイテムを試着することが出来た。また、実際に服を着用しているように見せた写真を撮って、スマートフォンに画像を送信したり、インスタグラムストーリーでシェアする機能も搭載されていた。
関連記事:NY ソーホーで初のARファッションポップアップが開催 : デジタルとリアルが融合するインタラクティブな世界とは
最近ゼロテンは、「JD Sports x Nike Need it Now」コレクションをアニメーション化するARミラー体験を提供。ニューヨークとシカゴの店舗で、来店客が同コレクションのアイテムをバーチャルに試着できるようにした。また、ニューヨークのコーチ(COACH)ソーホー店の店頭で行われたTabbyバッグを使ったインスタレーションや、トミー・ヒルフィガー(Tommy Hilfige)の「Tommy X Shawn Classics Reborn 」コレクションの発表にも協力した。
また、今年1月にルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)が発表した草間彌生氏とコラボレーションでは、キャンペーンの一環にARを用いて、世界のランドマークを草間氏を象徴するカラフルなドットでバーチャルに飾って見せた。
こうしたAR技術は今やファッション産業の中でも重要な役割を果たしており、ティファニーを含む多くのブランドがその可能性を探求している。未来に向けて、ARの進化が業界にさらなる変革をもたらすことは確実であり、新たな体験と創造性の幅広い可能性を提供してくれることだろう。