ファストファッションブランドのザラ(Zara)は、2024年10月より米国にて、中古衣類サービス「Zara Pre-Owned」を開始することを発表した。
この「Zara Pre-Owned」は、使用済みの衣類の修理、再販、寄付を通じて衣類のライフサイクルを延ばし、廃棄物の削減を目指す取り組みだ。同サービスはこれまで米国では導入されてこなかったが、2022年11月からすでにイギリスでは開始されており、現在はドイツ、オーストリア、ベルギー、スペイン、フィンランド、フランス、ギリシャ、イタリア、アイルランド、ルクセンブルク、オランダ、ポルトガルを含む16の欧州諸国で展開されている。
「Zara Pre-Owned」の主なサービスは、「リペア」、「再販」、「寄付」の3つに分けられる。リペアサービスでは、ザラの高い技術を持つテーラーたちが顧客が愛用する衣服の寿命を延ばすことをサポートする。再販サービスでは、顧客が中古のZara製品を購入または販売できるプラットフォームを提供し、衣類のライフサイクルをさらに延ばすことをで、新たな価値を生み出していく。これは、ザラの店舗、ウェブサイト、アプリを通じて利用可能であり、消費者が気軽に中古衣類のリサイクルに参加できる仕組みが整っている。
ザラはまた、使用済みの衣類、靴、アクセサリーの回収プログラムも開始している。このプログラムの目的は、使用済み製品を回収し、再利用することで環境負荷を軽減すると同時に、地域社会にポジティブな影響を与えることだ。集められたアイテムは、地域の支援団体に届けられ、寄付やリサイクルを通じて新たな価値を創出する。また、寄付された製品の一部は、リサイクル店で販売され、その収益は赤十字社や中国環境保護財団などの社会的プロジェクトの資金に充てられている。
こうしたサービスは、衣類のライフサイクルを延ばすだけではない。リサイクルを通じて持続可能なファッションを推進し、ザラの親会社、インディテックス(Inditex)の戦略において重要な役割を果たすものだ。
インディテックスのCEOであるオスカー・ガルシア・マセイラス(Oscar Garcia Maceiras)は、ザラのオンラインプラットフォームには毎日2200万人以上の訪問者が集まっていることを強調し、この取り組みが広範な消費者にリーチする可能性を持っていると述べている。また、2025年までにすべての戦略的市場において「Zara Pre-Owned」を展開する計画だと発表した。
ファストファッション業界では、過剰生産とそれに伴う廃棄物の増加が大きな問題となっている中、衣類の使用寿命を延ばすことは業界全体の喫緊の課題だ。ザラに限らず、H&Mやユニクロといった競合も中古市場やリペアサービスに参入し始めており、H&Mは再販プラットフォームのスレッズアップ(ThredUp)と提携して、米国で中古衣類のオンライン販売を開始している。ユニクロも昨年より、リペアサービス「Re:Studios」を米国市場で拡大し、顧客が持ち込んだ衣類の修理を実施している。
従来の大量生産・大量消費モデルから脱却し、持続可能な消費モデルへとシフトしていかなければならない転換期に直面するファストファッション業界。このような取り組みがさらに広がることで、ファッション業界全体が環境負荷の軽減と資源の循環を重視し、より持続可能な未来へと進んでいくことが期待出来るだろう。