マイテレサ(MYTHERESA)、リシュモンからユークス・ネッタポルテ・グループを買収へ

MYTHERESA

2024年10月7日(現地時間)、「マイテレサ(MYT Netherlands Parent B.V.)」はリシュモン(Richemont)が所有するイタリアのオンライン ファッションリテーラー、「ユークス・ネッタポルテ・グループ(YNAP)」の全株式を取得する契約を締結したことを発表した。これにより、マイテレサは、ラグジュアリーブランドを網羅するグローバルなマルチブランドデジタルラグジュアリーグループの設立を目指す。この取引の一環として、リシュモンはマイテレサの株式33%を取得する予定だ。

リシュモンは、5億5500万ユーロの現金ポジションでユークス・ネッタポルテ・グループを売却し、財務債務はない。取引完了は2025年上半期を予定しており、規制当局の承認を含む通常の条件に従うものとされている。

この取引により、マイテレサとユークス・ネッタポルテ・グループはそれぞれの強みを活かし、ラグジュアリー業界での地位をさらに強固なものとする予定である。マイテレサは、ユークス(YOOX)や、ザ アウトネット(THE OUTNET)といったオフプライス部門を分離し、より効率的で成長性の高い運営モデルを採用する計画だ。

マイテレサとユークス・ネッタポルテ・グループは、ラグジュアリー業界で革新と高品質な顧客サービスで知られている。今回の取引により、マイテレサ、ネッタポルテ、ミスター ポーター(MR PORTER)という3つの異なるブランドが共存し、それぞれの強みを活かしつつ、顧客に対して差別化された商品と体験を提供することが可能となるだろう。

マイテレサのCEOであるマイケル・クリガー(Michael Kliger)は、「この取引によって、マイテレサは世界的に卓越したマルチブランドデジタルラグジュアリーグループを創出する。3つのブランドは、各々のアイデンティティを維持しながら、インフラを共有し、シナジーを生み出すことができる」と語った。さらに、オフプライス事業の分離により、成長と収益性が向上することも期待されている。

リシュモン会長のヨハン・ルパート(Johann Rupert)もまた、「ユークス・ネッタポルテ・グループがマイテレサという信頼できるパートナーを見つけたことを喜ばしく思う」と述べた。リシュモンは今後、マイテレサの監査役会にメンバーとオブザーバーを指名する権利を持つことになる。

なお、リシュモンは、今回の取引に伴い約13億ユーロの評価損を計上する予定だ。取引完了後、リシュモンはマイテレサの株式33%を保有することになるが、これは取引終了時の株価や為替レート、そしてユークス・ネッタポルテ・グループの純資産の状態によって変動する可能性がある。

かつては競争が激しかったラグジュアリーEコマースの世界も、今では劇的な変化を遂げつつある。ファーフェッチ(Fartetch)が投げ売りに追い込まれ、マッチズ(Matches)が破産管理に陥ったことで、市場のプレイヤーは大きく減少した。リシュモンにとって、長年頭を悩ませていた赤字続きのユークス・ネッタポルテ・グループの売却も、ついに現実のものとなる。実際、ファーフェッチへの売却話は2023年12月に破談となったが、その後も売却の可能性は探られていた。リシュモンの決算では、ユークス・ネッタポルテ・グループは「事業終了」として位置づけられており、2024年6月末までの四半期では売上が15%も減少している。

こうした業界全体の急速な変化の中で、マイテレサとリシュモンは新たな一手を打つことを決意。今回の取引により、マイテレサはさらに強固なデジタルラグジュアリーのリーダーとしての地位を確立し、ユークス・ネッタポルテ・グループを傘下に収めることで、今後の成長と収益性の向上に大きな期待を寄せているのだ。