ファッション界で独自の地位を築いてきたキム・ジョーンズ(Kim Jones)が、フェンディ(Fendi)との4年間の旅路に終止符を打ち、ディオール(Dior)でのメンズウェアデザイナーの役割に専念することが発表された。
10月12日(現地時間)、LVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトンは、彼のフェンディ退任を正式に発表。ディオールのメンズウェアとフェンディのウィメンズウェアとクチュールを兼任してきたジョーンズは、今後その創造的エネルギーをすべてディオールに注ぐことになる。
ジョーンズがフェンディに参加したのは2020年のこと。コロナ禍とカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)の逝去で揺れ動くブランドに新たな息吹をもたらすべく、フェンディの歴史と彼自身の現代的で多文化的な感性を見事に融合させた。
彼が指揮を執った4年間で、フェンディの売上は驚異的に伸び、20億ユーロを突破。ジョーンズは商業的な成功にも強いこだわりを持ち、リアルクローズを意識したデザインで多くの顧客を魅了してきた。彼が目指すのは、友人たちやファッションアイコンが「これが欲しい!」と思うような服作りであり、それこそが彼の哲学であった。
フェンディにおける彼のキャリアのハイライトの一つは、2021年にドナテラ・ヴェルサーチ(Donatella Versace)とのコラボで生まれた「フェンダーチェ(Fendace)」であろう。このクリエイティブなスワップは、世界中のファッションシーンに衝撃を与え、ポップアップショップやウェブサイトで話題を独占。また、マーク ジェイコブス(Marc Jacobs)やティファニー(Tiffany & Co.)との協業も手掛け、常に新たな挑戦を続けてきた。
だが、全てが順風満帆だったわけではない。フェンディでの一部プロジェクトはLVMH内部で賛否を巻き起こし、ジョーンズのクリエイティブな挑戦に対する見方も分かれたようだ。それでも彼は、クリエイティブな視点を持ち続け、次々と斬新なアイデアを打ち出していった。
ジョーンズの退任により、フェンディの後任が誰になるのかが注目されているが、現在後任に関しては触れられず、「フェンディの新しいクリエイティブ組織は適切な時期に発表される」とのみ述べられた。業界筋によると、ヴァレンティノの前クリエイティブディレクターを務めたピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)などが候補に挙がっており、クリエイティブな変革が続く中、ラグジュアリーマーケット全体にもさらなる波紋を呼びそうだ。
LVMHはこの退任について声明で、「キム・ジョーンズは、フェンディの歴史的遺産に彼の現代的で多文化的な美学を融合させ、ブランドのクリエイティブな遺産に大きな貢献を果たした」と述べ、
LVMHの会長兼CEOであるベルナール・アルノー(Bernard Arnault)は、ジョーンズを「非常に才能のあるデザイナーであり、過去4年間フェンディに彼独自の多文化的なビジョンをもたらしてくれた」と称賛し、「彼の貢献に感謝し、ディオール メンズでのさらなる創造性を楽しみにしている」とコメントした。
キム・ジョーンズのフェンディでの4年間は、単なるファッションデザインを超え、ブランドの歴史と未来を結びつけた重要な時期であった。彼の創造力と情熱がディオールでどのように進化していくのか、業界全体が注目している。