エルメス(Hermès)は、10月24日(現地時間)に発表した第3四半期の業績報告で、売上高が前年同期比で11.3%増加したことを明らかにした。これは、他のラグジュアリーブランドが厳しい経済環境に直面する中で、エルメスがその卓越したブランド力をもって安定した成長を続けていることを裏付ける結果である。
この3か月間でエルメスの総売上高は37億ユーロ(約3.99億ドル)を記録し、前年同期比で為替変動を除くと11.3%の成長を達成。2024年9月末時点で、全体の売上高は112億ユーロに達し、安定した成長を保った。
グローバル市場での力強い成長
地域別の売上では、すべての地域での成長が報告され、エルメスのブランド力の強さが改めて確認された。特に以下の地域では、際立ったパフォーマンスが示されている。
- アメリカ:前年同期比13%の成長を達成。ニュージャージー州プリンストンに新たな店舗をオープンし、オンライン販売もメキシコ市場へと拡大。
- 日本:23%増の成長を記録。東京の銀座三越に新店舗を開店し、現地の顧客から高い支持を得た。
- ヨーロッパ:18%増と力強い成長を示し、観光客の回復や地域内需要の高まりが寄与している。
製品ライン別の成長と未来への展望
また同社は、その多岐にわたる製品ラインにおいても成長を継続。特に「レザーグッズ&馬具部門」は、新作バッグ「コンスタンス・エラン」や「ボリード・ア・ドス」が人気を博しており、革新的なデザインとともに+17%の成長を遂げた。ファッション部門でも、2025年春夏コレクションの発表が成功を収め、+15%の成長を記録した。
一方で、シルクと時計部門では若干の減速が見られたが、エルメス全体の堅実なビジネスモデルは揺るぎないものであり、各セクターにおける成長を裏付けている。
サステナビリティと未来のビジョン
その他、サステナビリティに関する取り組みとしては、フランスのリヨンに新たなレザーグッズの工房を開設。また、地元の職人を育成する「エコール・エルメス・デ・サヴォアフェール」も設立した。さらに、S&PやMSCIのレーティングでも高評価を得ており、持続可能性への取り組みが高く評価されている。
エルメスの希少性と富裕層からの支持
これまでエルメスは、クラシックで高品質な製品を提供し続けると同時に、供給の管理を厳格に行うことで、メゾンの希少性と価値を高めてきた。その結果、バーキンバッグのようなアイテムは10,000ドルを超える高額な価格帯でありながらも、世界中の富裕層の間で根強い人気を誇っている。
エルメスのエグゼクティブ・チェアマンであるアクセル・デュマス(Axel Dumas)は、「経済的および地政学的に不確実な状況にもかかわらず、第3四半期の結果は非常に良好であり、全従業員の努力と顧客の忠誠心に感謝しています。エルメスの独自のビジネスモデルのおかげで、長期的な投資と採用を進め、引き続き未来への成長を目指していきます」と声明で述べた。
エルメス以外のブランドは失速
なお、この数日間で、ラグジュアリーブランドを数多く抱える仏のコングロマリット、LVMH(モエ ヘネシー ルイ ヴィトン)とケリング(Kering)もそれぞれ2024年第3四半期の決算を発表しているが、その結果は思わしくない。
LVMHの2024年第3四半期の売上高は、全体で190億7600万ユーロ(約210億ドル)に達したものの、オーガニックベースの売上は3%の減少を記録。また、10月23日に第3四半期の業績を発表したケリングは、前年同期比16%の売上減少を報告。グッチやサンローランを含んだ同社が擁するブランド全体が、市場の困難な局面に直面していることが浮き彫りとなった。