英バーバリー(Burberry)が直面する課題とモンクレールによる買収の噂

Burberry

バーバリー(Burberry)の新CEO、ジョシュア・シュルマン(Joshua Schulman)は、英国発の伝統あるラグジュアリーブランドを再生させるという厳しい課題を背負っている。同ブランドはここ数年で大きく売上が落ち込み、株価も今年に入ってから約40%も下落しているため、市場では買収ターゲットとしての憶測が飛び交っている。

モンクレールによる買収の噂と株価の急騰

特に、イタリアのモンクレール(Moncler)がバーバリー買収を検討しているとの報道が出たことから、バーバリーの株価は月曜日に最大8%上昇した。パファージャケットで有名なモンクレールはこの噂について「根拠のない噂にはコメントしない」としているが、各メディアでは、「モンクレールがアウトドア衣料の分野で新たな巨人を創出するために買収を視野に入れている」と、業界内の噂が増えていることを報じている。

モンクレールが買収に踏み切るかについては慎重な意見も多い。イタリアの証券会社インターモンテ(Intermonte)は、バーバリーのような大規模企業の再生には大きなリスクが伴うため、実現の可能性は低いと指摘。また、モンクレールはすでに2020年からストーン アイランド(Stone Island)の買収を進めているが、この取引も市場の期待をやや下回っている。UBSのアナリストは、このタイミングで新たな買収を進めることには驚きがあるとしている。

アウトレット店舗と価格戦略の課題

さらに、バーバリーにとって喫緊の課題は、アウトレット店舗と価格戦略の見直しだ。現在、中国、日本、英国、米国に展開する約56のアウトレット店舗では、過去のコレクションや余剰在庫が大幅な割引で提供されており、ブランドの高級志向を揺るがす要因と見られている。アナリストらはこのアウトレットの多さが、ブランドを高級ラインに押し上げるための戦略を損なっていると指摘した。

特に、バーバリーの定番アイテムは毎年大きなデザインの変化が少ないため、過去のコレクションのアイテムが半額で購入できるとなれば、正規価格で新しい商品を購入する動機が薄れる恐れがある。このような状況は、ブランドのプレミアム感を求める消費者にとってネガティブな印象を与え、結果的に高級路線を目指す戦略の妨げとなりかねない。

しかし、アウトレット店舗の見直しにはリスクも伴う。HSBCの推計によれば、アウトレット販売はバーバリー全体の売上の約30%、利益の50%を占めているため、仮にアウトレット数を削減することになれば、売上に大きな影響が及ぶ可能性がある。また、長年培ってきた消費者基盤がある以上、完全にアウトレット店舗を廃止するのは難しいともいえる。バーバリーがどのようにこのバランスを取り、アウトレットの影響を最小限に抑えつつ、ブランド価値を高めていくかが今後の大きな課題となっている。

クリエイティブディレクションの混乱

クリエイティブ面でも、バーバリーは数年で複数のリーダー交代を経験しており、ブランドアイデンティティが混乱しているとの見方がある。現クリエイティブディレクターのダニエル・リー(Daniel Lee)は、過去にボッテガ・ヴェネタで成功を収めたが、バーバリーでの彼のデザインはまだ同様の評価を得ていない。リーの将来についての噂もあるが、会長のジェリー・マーフィー(Gerry Murphy)はクリエイティブリーダーシップの変更は想定していないと述べている。

Burberry Spring/Summer 2025 Collection
Burberry Spring/Summer 2025 Collection

その他、LVMHのベルナール・アルノー(Bernard Arnault)もバーバリーとモンクレールの取引に関心を示しているとの報道もされている。アルノーはモンクレールに投資している背景もあることから、業界内では彼が取引を実現させたい意向だと噂されている。

シュルマンの手腕が、バーバリーのブランド価値を再構築し、ラグジュアリー業界の舞台で再び輝かせることができるか、今後の展開が注目される。