サックス・グローバル(Saks Global)、ニーマン・マーカスを買収完了し、新たなリーダーシップを発表

Neiman Marcus

12月23日(現地時間)、サックス・グローバル(Saks Global)は、アメリカを代表する高級百貨店グループ「ニーマン・マーカス・グループ(Neiman Marcus Group)」を総企業価値27億ドルで買収したと発表した。この統合により、ニーマン・マーカス(Neiman Marcus)、バーグドルフ・グッドマン(Bergdorf Goodman)、サックス・フィフス・アベニュー(Saks Fifth Avenue)、サックス・オフ5TH(Saks OFF 5TH)という象徴的なブランドがサックス・グローバルのポートフォリオに加わることとなる。それぞれのブランドは独自のアイデンティティを維持しながらも、新たなビジョンのもとで成長を目指していく。

この買収は今年7月に最初に発表されたもので、サックス・フィフス・アベニューの親会社であるHBCが主導した。なお、取引の完了に伴い、HBCのカナダ事業(ハドソンズ・ベイの店舗およびウェブサイトを含む)は資本再編が行われ、サックス・グローバルとは別の体制で資金調達を進めることとなった。

逆境からの再起を目指すニーマン・マーカス

今回の取引は、2020年の新型コロナウイルスのパンデミックにより苦境に立たされたニーマン・マーカスの再生を支えるものでもある。同社は、パンデミックの影響で全米の店舗が閉鎖を余儀なくされ、収益が大きく落ち込んだ結果、破産保護を申請していた。今回の統合は、同社が再び業界の最前線に立つための新たな一歩となる。

サックス・グローバルの新たなリーダーシップと成長戦略

サックス・グローバルのエグゼクティブチェアマンであるリチャード・ベイカー(Richard Baker)は、今回の統合がラグジュアリー小売業界における歴史的な出来事であると強調する。
「データとイノベーションを活用し、顧客体験を再定義することで、これまでにないマルチブランドのラグジュアリーポートフォリオを構築しました。この統合は、消費者にとっても、業界全体にとっても新しい価値を提供する契機となるでしょう」と語った。

新体制のもとで、サックス・グローバル運営グループのCEOにはマーク・メトリック(Marc Metrick)が引き続き就任する。同氏は次のように述べる。
「今回の統合により、ラグジュアリーショッピングの未来を形作る絶好の機会を得ました。顧客一人ひとりに合わせた体験を提供するため、業界の知見と最先端のテクノロジーを活用していきます。」

さらに、新たに設けられた「社長兼最高商業責任者(President & Chief Commercial Officer)」には、サックスの元最高マーケティング責任者(CMO)であるエミリー・エスナー(Emily Essner)が就任。彼女のリーダーシップにより、顧客体験の進化と収益の向上が期待されている。また、バーグドルフ・グッドマンは引き続き独立したブランドとして運営され、新たな社長には元サックス最高商品責任者(Chief Merchandising Officer)のトレイシー・マーゴリーズ(Tracy Margolies)が就任する。

不動産と投資の可能性を最大化

サックス・グローバルの不動産・投資部門も、統合を機にさらなる拡大を目指す。新たにCEOに就任したイアン・プットナム(Ian Putnam)は、約70億ドルの資産価値を持つ不動産ポートフォリオを基盤に、ラグジュアリー市場での成長を図る計画を発表。不動産開発と戦略的投資を通じ、統合ブランド間のシナジーを最大化する方針だ。

強力な投資家陣とテクノロジーパートナーの支援

今回の取引は、アマゾン(Amazon)、セールスフォース(Salesforce)、オーセンティック・ブランズ・グループ(Authentic Brands Group)、G-IIIアパレルグループ(G-III Apparel Group)などの新規投資家の支援を受けて実現した。22億ドルのシニア担保付ノートの発行や資産担保型貸付(ABL)も活用されている。これらの投資家は、データとAIを駆使した顧客体験の最適化や、戦略的パートナーシップを通じてサックス・グローバルの成長を後押しする。

革新的なパートナーシップと強固な基盤を得たサックス・グローバルは、統合後のポートフォリオを活用し、ラグジュアリー小売業界の新たな可能性を切り拓こうとしている。その挑戦がもたらす変革は、これからのラグジュアリーショッピングの在り方を大きく進化させるだろう。