2月11日(現地時間)、フランスのラグジュアリーコングロマリット、ケリング(Kering)は、2024年の第4四半期決算を発表し、売上高が45億ドル(43億9000万ユーロ)で、前年同期比12%減少したことを報告した。これは、ロンドン証券取引所グループ(LSEG)の予測をわずか上回る結果となったが、ラグジュアリー市場全体の減速を反映する厳しい決算である。
主力ブランドのグッチの売り上げ低迷が影響
ケリングの業績不振の最大の要因は、主力ブランドであるグッチ(Gucci)の売上低迷にある。第4四半期の売上は19億2000万ドルで、前年同期比24%減。ケリング全体の売上の約半分を占めるグッチの落ち込みは、グループ全体の成長に重くのしかかっている。
一方、サンローラン(Saint Laurent)も逆風にさらされ、売上は8%減少。しかし、ボッテガ ヴェネタ(Bottega Veneta)の営業利益率15%増と、市場予想を大きく上回る結果を見せた。さらに、バレンシアガ(Balenciaga)やアレキサンダー マックイーン(Alexander McQueen)を含む「その他のハウス」部門は4%減と低迷するも、ケリングのアイウェアおよびコーポレートセールスは10%増と堅調な成長を維持した。
ケリングのCEO、フランソワ=アンリ・ピノー(François-Henri Pinault)は、今回の決算発表に際し、次のようにコメントしている。「厳しい一年の中で、いくつかのブランドの変革を加速させ、ブランドの健全性と魅力を長期的に強化するために果敢に行動した。特にグッチでは、コミュニケーションの影響力を高め、製品戦略を明確にし、流通の質を向上させるための重要な決断を下しました。組織の安定化を進め、重要な人材を採用し、実行スピードを加速し、オペレーションの効率を向上させます。我々の努力は継続されるべきであり、ケリングは安定の段階に達したと確信しています。ここから徐々に成長軌道へと回帰していく予定です。」
先日発表されたグッチのクリエイティブディレクターであるサバト・デ・サルノ(Sabato De Sarno)の退任は、この変革の一環となる。デ・サルノは2023年にアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)の後任として着任し、新たな方向性を打ち出してきたが、就任からわずか2年での退任することとなり、現時点で彼の後継者は発表されていない。
ラグジュアリー市場全体の低迷と影響
2024年はラグジュアリー市場全体が低迷し、世界経済の不透明感、地政学的リスクの増加、アジア市場での高級品消費の減少などが業績に影響を与えた1年だった。これにより、ケリングのピノー、LVMHのベルナール・アルノー(Bernard Arnault)、ロレアルのフランソワーズ・ベタンクール・メイヤー(Françoise Bettencourt Meyers)の3名は、合わせて700億ドルの資産を失ったと報じられている。
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なお、競合であるLVMH モエ ヘネシー ルイ ヴィトン(LVMH Moët Hennessy Louis Vuitton)は、2024年の通年売上を882億7000万ドル(846億8000万ユーロ)と発表し、市場予想を上回る結果となった。しかし、中国市場の低迷により、ファッション&レザーグッズ部門の売上がパンデミック以降初めて減少するなど、ラグジュアリー市場全体の不安定な状況が浮き彫りとなっている。
ケリングは、各ブランドの魅力を強化し、創造性と伝統のバランスを維持しながら、持続可能な成長戦略を進める方針を示している。今後の業績回復には、グッチの新たなクリエイティブディレクターの選定や、アジア市場での需要回復が鍵となるだろう。
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