ユークス ネッタポルテ(Yoox Net-a-Porter)が中国市場から撤退へ

ユークス ネッタポルテ(Yoox Net-a-Porter)

リシュモン(Richemont)傘下のラグジュアリーECプラットフォーム、ユークス ネッタポルテ(Yoox Net-a-Porter, YNAP) が中国市場からの撤退を決定した。

これに伴い、Tmall、WeChatミニプログラム、小紅書(Xiaohongshu)、抖音(Douyin) を含む中国国内の全オンラインチャネルが2025年3月20日をもって閉鎖される。アフターサービスは4月22日まで提供される予定だ。

かつて世界最大級のラグジュアリーECとして成長を遂げたユークス ネッタポルテだが、中国市場における競争の激化や消費者ニーズの変化に適応しきれなかったことが、今回の撤退の背景にあると考えられる。

成長を続ける中国市場で苦戦したユークス ネッタポルテ

ユークス ネッタポルテは2015年にネッタポルテ(Net-a-Porter)とユークス(Yoox)の合併によって誕生し、当時は世界最大のラグジュアリーECプラットフォームとして注目を集めた。2017年の売上高は21億ユーロに達し、世界規模での事業展開を進めていた。

2018年にはアリババ(Alibaba)との合弁事業「Fengmao」を設立し、中国市場への本格参入を試みた。しかし、同社の戦略は現地市場の動向と合致せず、競争が激しい中国のラグジュアリーEC市場で大きな成功を収めることはできなかった。というのも、中国の消費者は、パーソナライズされたサービス、迅速な配送、24時間対応のカスタマーサポートを求める傾向が強い。これに対し、ユークス ネッタポルテのビジネスモデルは欧米市場向けの運営に依存しており、中国市場特有のニーズに十分に対応できなかったことが課題となった。

また、中国国内のラグジュアリーEC市場では、小紅書(Xiaohongshu)やJD.comが台頭し、消費者の購買行動も変化。特に直営ブティックや百貨店のアップグレードにより、オンラインではなくオフラインでの購入を重視する層も増えてきた。このような環境の変化が、ユークス・ネッタポルテの撤退決定に大きな影響を与えたと見られる。

リシュモンの事業整理とマイテレサ(Mytheresa)への売却

ユークス ネッタポルテの撤退は、中国市場だけでなくグローバル規模での事業整理の一環でもある。というのも、同社は収益化に苦戦し、リシュモンにとって財務的な負担となっていた。2010年から2023年の間に、リシュモンはユークス ネッタポルテに対して18億ユーロの非現金減損を計上している。

そんな中、リシュモンは2022年8月に、英国のラグジュアリーECのファーフェッチ(Farfetch) および中東の投資家に対し、ユークス ネッタポルテの50.7%の株式を売却する計画を発表した。しかし、2023年末にファーフェッチが財務危機に陥ったため、この取引は破談となった。その後、2023年10月にリシュモンはユークス ネッタポルテの100%をマイテレサ(Mytheresa)に売却することを決定し、この取引は2025年前半に完了予定だ。

リシュモンはこの売却によって、13億ユーロの減損処理を計上する見込みであり、ラグジュアリーEC分野への投資が大きな損失につながったことが浮き彫りとなっている。

ラグジュアリーEC市場の変化

ユークス ネッタポルテの中国撤退は、ラグジュアリーEC業界全体が大きな転換期を迎えていることを示している。中国市場では、ECよりも直営ブティックや高級百貨店での購買体験が重視されるようになり、多くのブランドがオンラインとオフラインを融合させた「デジタル×フィジカル」戦略を強化している。

また、この撤退はユークス・ネッタポルテだけの問題ではなく、ラグジュアリーEC全体のビジネスモデルが見直されるべき状況を表している。近年、スークー(Secoo)やマッチズ(Matches)といった企業も財務危機や破産に直面しており、単なる商品販売だけでは生き残れない時代になってきた。今後、ラグジュアリーECが持続的に成長するためには、ブランドとの直接的なつながりを深め、付加価値のあるサービスを提供することが不可欠だ。

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