4月17日(現地時間)、エルメス(Hermès)は2025年第1四半期の決算を発表し、売上高が前年同期比で9%増(為替一定で7%増)の41億ユーロ(約53億ドル)に達したことを明らかにした。複雑な経済情勢のなかでも、好調な滑り出しを見せている。
地域別では日本が最も高い成長率を記録
地域別の成長率では、日本が17.9%増と最も高く、現地顧客の継続的な支持が背景にある。欧州地域もフランス(14.2%増)、フランス以外のヨーロッパ(12.7%増)ともに好調で、観光需要と地元消費の双方が売上を押し上げた。アメリカ地域では13.3%増と2桁の成長を記録。米国内では1月からの山火事や降雪による一部店舗の一時閉鎖もあったが、3月には全都市で堅調な売上を見せた。
一方、アジア太平洋(日本を除く)は1.2%増にとどまり、前年の高い比較対象や中国本土の消費停滞が影響した。「中国本土における売上は実質的に横ばいだった。前年同期の高い比較対象を考慮すれば、堅調であると考えている」と、エリック・アルグエ(Eric Halgouët)最高財務責任者(CFO)はコメントしている。
台湾では忠実な顧客層に支えられ、引き続き強い成長を維持している。一方、マカオでは中国人観光客の動向変化による影響が見られた。深センでは競争が激化する中で、香港は依然として「重要な金融ハブ」であるとされている。
主力はバッグとアパレル、時計は2桁減
部門別では、エルメスを象徴するレザーグッズ・馬具部門が10%増と好調を維持。新作の「メドール」や「ムスケトン」などのバッグが売上を牽引した。プレタポルテ・アクセサリー部門も7.2%増と順調で、これら2部門で全体の約72%を占める。
一方、ウォッチ部門は10%減、ビューティー部門は0.5%減と厳しい結果となった。両部門を合わせた売上構成比は5.8%にとどまる。
米国では5月に価格改定を予定
各国と米国間での関税引き上げへの懸念が高まるなか、最高財務責任者のエリック・アルグエ(Eric Halgouët)は「当社は5月1日より、米国における全製品カテゴリーの価格を引き上げ、政府による10%の輸入関税を完全に相殺します」と述べた。さらに「影響を中和するための追加的な価格調整であり、現在その最終調整を進めている」と補足している。
なお、同社は年初にもすでに世界的に6〜7%の価格改定を行っており、通常は年1回の調整にとどめている。今回の米国での追加改定は、LVMHなど他社が同様の措置を取る中で、収益性の維持を狙った対応とみられる。
LVMHとの差が鮮明に、事業構造の優位性を示す
さらに、現地時間今週火曜日には、エルメス・アンテルナショナル(Hermès International SCA)の時価総額が、かつて買収を試みたライバル企業LVMHを上回ったことが注目された。エルメスの時価総額は2,436.5億ユーロ(約27.6兆円)に達し、一時的にLVMHの2,434.4億ユーロを超え、フランスの代表的株価指数CAC40で最も時価総額の高い企業となり、欧州全体でもSAP(ドイツのソフトウェア大手)、ノボ ノルディスク(デンマークの製薬企業)に次ぐ第3位の上場企業となった。こうしたことで、改めて両社のビジネスモデルや戦略の違いが浮き彫りとなった。
エルメスは現在も自社のクラフツマンシップを支える基盤強化を進めており、フランス国内における生産拠点の拡充に注力している。2025年中にはシャラント県リル・デスパニャックに新たなレザー工房を開設予定で、さらにジロンド県ループとアルデンヌ県シャルルヴィル=メジエールでも、それぞれ2026年、2027年の稼働を見込んでいる。ブランドの技術継承と品質維持を支える構造が、同社の持続的成長を下支えしている。
Copyright © 2025 Oui Speak Fashion. All rights reserved.