ヴァレンティノ(Valentino)、ミケーレ初コレクション好発進も2024年は売上3%減

Valentino

4月18日(現地時間)、イタリアのラグジュアリーメゾンであるヴァレンティノ(Valentino)は、2024年の通期決算において売上高が前年比3%減の13億1000万ユーロ、EBITDAは22%減の2億4600万ユーロを記録したことを明らかにした。同社はこの結果を「困難かつ複雑な状況」と表現しており、世界的な経済不安や高級消費の停滞が影響したものと見られる。

直営販売が業績を下支え

そんな厳しい経済環境の中でも、ヴァレンティノの直営販売(Eコマースを含む)は前年比5%の成長を記録し、全体の70%を占めた。特にEコマースは、2023年の11%から2024年には15%へと拡大し、為替一定ベースでは実に37%もの成長率を示している。

一方、卸売チャネルは2024年に約20%削減され、同社は「より選別されたディストリビューションと統合的パートナーシップ」に注力する方針を明らかにしている。リテール重視の姿勢は、ブランドの中長期的な成長戦略において中核を成すものだ。

地域別の明暗と注目事業の好調

地域別に見ると、日本、中東、アメリカでは前年を上回る業績となったが、ヨーロッパおよびアジアの一部地域では、特に年後半にかけて販売の鈍化が目立った。

一方、ロレアル(L’Oréal)とライセンス契約を結ぶビューティ&フレグランス部門は大きく伸長し、前年比で51%の売上増を記録。ブランドの多角化と製品ポートフォリオの広がりが、業績全体を支える柱となっている。

ミケーレの加入で創造性の再構築

2024年のもう一つの大きな転機は、アレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)のクリエイティブディレクター就任である。ミケーレは、グッチ(Gucci)での長年の実績を経て、2024年3月にヴァレンティノへ加入。25年間にわたりブランドを率いてきたピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)の後任として、再構築の舵を取る役割を担っている。

同年9月から10月にかけて発表されたミケーレが手がける初のコレクション「Avant les Débuts」では、ファンや批評家からも好意的な反応を得た。CEOのヤコポ・ヴェントゥリーニ(Jacopo Venturini)は、「2024年末に発表された彼の初コレクションは、アレッサンドロの卓越したビジョンが過去を独自の視点で再解釈し、自由な創造性と見事に融合していることをすでに示しています」と述べ、同氏への厚い信頼を示している。

サステナビリティと人材への取り組み

また同社は、業績だけでなく企業としての姿勢も強化する。2024年には2年連続で「ジェンダー平等認証(Gender Equality Certification)」を取得。さらに、ブティックおよびアウトレットの販売スタッフに向けた新たな雇用契約を導入し、イタリア国内全社員に対する生産性ボーナスの支給制度も開始した。これらの取り組みは、働きやすい環境の整備と人材への投資を加速させるものだ。

また、サステナビリティ・ガバナンスの面では、専門委員会の設置や社内トレーニングの強化、部門を横断するワーキンググループの組成など、長期的な視点での取り組みも進められている。

ケリングが出資、筆頭株主はマユーラが維持

なおヴァレンティノは、2012年にカタール王室系の投資会社マユーラ(Mayhoola)により買収されており、現在も同社が70%の株式を保有する筆頭株主となっている。また、2023年7月に、仏ケリング(Kering)が30%の株式を約17億ユーロで取得。2028年までに全株式を取得できるオプションを保有し、すでに取締役会への参加も果たしている。

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