バレンシアガ(Balenciaga)、ピエールパオロ・ピッチョーリを新クリエイティブ・ディレクターに迎える

Balenciaga

ストリートとラディカルで存在感を放ってきたバレンシアガ(Balenciaga)に、”詩人のクチュリエ”ピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)が加わる。その変化は、ブランドの精神にどのような波紋をもたらすのか?

5月19日(現地時間)、ケリング(Kering)は、ピエールパオロ・ピッチョーリがバレンシアガの新クリエイティブディレクターに就任することを正式に発表した。ピッチョーリの就任日は2025年7月10日、初コレクションは2025年10月に発表予定となっている。

ヴァレンティノ(Valentino)でクリエイティブディレクターを務めてきたピッチョーリは、長年にわたりブランドの美学を刷新してきた人物だ。2008年よりマリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)と共に共同ディレクターとして就任後、2016年からは単独で指揮を執り、エモーショナルかつ詩的な表現によってオートクチュールの再評価を牽引した。その手腕は、現代のファッションにおいて最も詩的なデザイナーのひとりと評されるゆえんである。

こうしたピッチョーリの手腕が、ストリート的アプローチで再興を果たしたバレンシアガに、どのような変革をもたらすのだろうか。

就任発表と同時にピッチョーリはレターを公開し、「新しい物語には、そこに至るまでの道のり、今の自分という人間、そしてすでに経験してきたことが深く関わっています」とその想いを綴った。

レターの中で、彼自身が初めてInstagramに投稿した写真が、1967年のクリストバル・バレンシアガによるウェディング・アンサンブルだったことに触れ、「偶然かもしれないが、今は全体像が見えています」と語る。また、これまでブランドを率いてきたクリストバル・バレンシアガ(Cristóbal Balenciaga)、ニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquière)、アレクサンダー・ワン(Alexander Wang)、そしてデムナ(Demna)への敬意を示し、こう続ける。

「バレンシアガが今日あるのは、道を切り開いてきたすべての人々のおかげです。クリストバル、ニコラ、アレックス、デムナ。どの時代においても、常に進化と変化を遂げながらも、メゾンの美学的価値観を見失うことはありませんでした。」

 

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ピッチョーリの就任について、ケリング副CEO フランチェスカ・ベレッティーニ(Francesca Bellettini)は、「彼のクチュールへの造詣とサヴォアフェールへの情熱が、ハウスにとって理想的な選択です」と語り、同時に、これまでの10年間にバレンシアガの現代的アイデンティティを築き上げたデムナの功績にも感謝を述べた。

また、バレンシアガCEOのジャンフランコ・ジャナンジェリ(Gianfranco Gianangeli)も、「彼のビジョンは、ブランドの豊かな遺産と創造性をさらに前進させるものになるでしょう」と期待を寄せている。

ストリートからクチュールへ—大胆な方向転換か、それとも融合か

バレンシアガはここ10年、デムナの下でデジタル時代における強烈なブランドパーソナリティを築いてきた。政治的・社会的メッセージ性を含んだランウェイ演出や、バーチャルの世界観を拡張するスタイルで話題をさらってきた同ブランドが、ピッチョーリという「詩人のようなクチュリエ」を迎えるという決断は、まさに新章の幕開けだ。

「美しさとは、正しさである」と語るピッチョーリが、バレンシアガでどのような美しさを描くのか。そして、ブランドの根幹であるラディカルな実験精神と、彼の繊細な詩的感性がどのように交差するのか。10月に披露される初コレクションに、今から期待が高まる。

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