ファッションと金融という異なる分野をつなぐキーワードが「クラフトマンシップ」だ。
その共通価値を体現するイベント「UBS House of Craft × Dior」が、2025年6月6日から8日まで、ニューヨークの28 Pine Streetで開催される。主催はスイスの金融機関UBS。世界的メゾンであるディオール(Dior)とのパートナーシップのもと、クチュールの技と美を五感で味わう空間が生まれる。
同展は、ファッションという枠組みを超えて、ディオールが受け継いできた職人精神と、UBSが掲げるタイムレスな価値観や未来志向を融合させる。80年以上にわたるディオールの歴史を、現代的な視点から再構築することで、クチュールというクラフトの最高到達点を体感するための、希少かつ先進的なアプローチとなっている。
歴代7人のクリエイティブ・ディレクターをつなぐ、ディオール初のアーカイブ回顧
「UBS House of Craft × Dior」の最大の見どころは、ディオールの歴代7人のクリエイティブディレクターの作品が一堂に展示する「ブランド史上初の試み」であるということだ。
クリスチャン・ディオール(Christian Dior)を起点に、イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)、マルク・ボアン(Marc Bohan)、ジャンフランコ・フェレ(Gianfranco Ferré)、ジョン・ガリアーノ(John Galliano)、ラフ・シモンズ(Raf Simons)、マリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)まで、各時代を象徴するビジョンと美意識が再編集される。加えて、ディオール オムのデザイナーとして知られるキム・ジョーンズ(Kim Jones)への特別なトリビュートも展開される。
なお、このプロジェクトのキュレーションを手がけたのは、元『Vogue Paris』編集長であり『CR Fashion Book』の創設者としても知られるカリーヌ・ロワトフェルド(Carine Roitfeld)。彼女はディオールのアーカイブに直接アクセスし、80年におよぶブランドの歴史から象徴的なルックを厳選し、スタイリングを施した。
また、写真を担当するのは、ディオールとの長年のコラボレーションで知られる写真家ブリジット・ニーダーマイヤー(Brigitte Niedermair)。彼女のレンズを通じて捉えられたアーカイブピースは、単なる記録を超え、現代の視覚文脈の中で新たな生命を得ている。

ディオールの哲学に宿るニューヨークというインスピレーション
このエキシビションの舞台となるニューヨークは、創業者クリスチャン・ディオール(Christian Dior)が深い愛着を抱いていた街としても知られている。同都市を舞台に展開することで、ブランドと都市の文化的対話が成立している点にも注目したい。
会場内では、実際のアーカイブ衣装と共に、編集的なビジュアルが大判で展示され、ファッションの芸術性と記録性が交錯する空間が構築される予定だ。1947年の「バー」スーツや、ガリアーノによる2004年の王冠付きドレスなどの象徴的なアイテムも登場し、来場者はそのディテールを間近で体感できる。
金融×ファッション=クラフトの未来形
UBSはこうした取り組みを通じて、伝統と革新が交差する「クラフト」の可能性を、金融の枠を超えて再定義しようとしている。
UBSグループ・チーフ・マーケティング・オフィサーであるジョン・マクドナルド(John McDonald)は、「UBSにとってクラフトとは単なる概念ではありません。お客様の願いに応えるための献身、卓越性、そして伝統と未来を見据えたビジョンを体現する姿勢そのものなのです」とコメント。
また、ディオールのグローバル・コミュニケーション責任者であるオリヴィエ・ビアロボス(Olivier Bialobos)は、「この連携は、卓越性、オートクチュールのエレガンス、そして1947年のニュールック以来、ディオールが注いできた並外れたサヴォワフェールを称えるものです」と述べている。
「クラフト」を軸に拡張していくブランド体験
ちなみに、UBS主催のこのブランド体験型プログラム「UBS House of Craft」は2024年から始まったばかり。初回はニューヨークを舞台に、時計専門メディア「Hodinkee」との提携により、ジャガー ルクルト(Jaeger-LeCoultre)やA. ランゲ&ゾーネ(A. Lange & Söhne)など、最高峰の時計職人たちを招いたイベントが実施された。イベントでは、製造工程のデモンストレーションやパネルディスカッション、コレクター向けの限定展示などが行われ、「時を刻むクラフト」の奥深さが顧客に体験的に伝えられた。
今後は、美食(Gastronomy)やアジア圏での展開も予定されており、ミシュランシェフや伝統工芸のマイスターなど、各分野の第一人者との協業が検討されている。分野は異なれど、その核にあるのは「クラフト=人の手による精緻な価値創造」であり、そこに宿る時間、経験、情熱の蓄積をUBSは「投資と同義」のものとして捉えている。
今回のディオール展は、その拡張線上におけるファッション分野での最前線の試みであり、ビジネスの文脈においても、このような分野横断型のブランディングと文化戦略がどのように展開されていくのか、注視する価値があるだろう。
UBS House of Craft × Dior
開催日程:2025年6月6日(金)〜6月8日(日)
会場:28 Pine Street, New York City
入場:無料(事前登録制)
詳細・登録:https://ubs.com/HoC
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