フランス、ウルトラファストファッションの「シーイン（Shein）」や「テム（Temu）」に対する新規制法案を可決

フランスにおいて、低価格で大量生産される衣類を取り扱う「ウルトラファストファッション」に対する新たな規制が動き出そうとしている。

6月10日（現地時間）、フランス上院は、主に中国発のECプラットフォーム「シーイン（Shein）」および「テム（Temu）」を対象としたファストファッション規制法案の修正版を、賛成337票・反対1票という圧倒的多数で可決した。

同法案は、環境負荷の軽減と不公平な価格競争の是正を目的としており、欧州における同種の法整備としては先駆的な位置づけとなる。フランスの環境エネルギー管理庁（ADEME）によれば、同国では毎秒35点の衣類が廃棄されており、2010年から2023年にかけて、ファストファッション関連の広告商品市場は23億ユーロから32億ユーロへと急増した。こうした背景のもと、持続可能な産業構造への移行を見据えた規制強化が急がれている。

環境スコア制度と課税措置

法案の柱となるのが、衣類の環境負荷を可視化する「エコスコア」の導入である。二酸化炭素排出量、資源使用量、再利用可能性などを評価基準とし、スコアの低い商品に対しては2025年から1点あたり最大5ユーロ、2030年には最大10ユーロの環境税が課される見込みだ。課税額の上限は、製品の税抜小売価格の50％に設定されている。

また、ウルトラファストファッションブランドによる広告は禁止され、これらの製品をソーシャルメディアなどで宣伝したインフルエンサーにも制裁が科される見通しである。

こうした動きに対し、フランス発のリセールプラットフォームであり、かねてより「循環型モデルによる構造的変革」の必要性を提唱してきた「ヴェスティエールコレクティブ（Vestiaire Collective）」は、「これは、超ファストファッション企業にどのように責任を問うべきかという、世界的な議論の扉を開くものです」と述べ、ヴェスティエールコレクティブは、このファッションの新時代を心から歓迎します」とコメントした。

ヴェスティエールコレクティブは、2022年より同社のプラットフォームにおけるファストファッションアイテムの購入、販売、または出品を禁止しており、その対象ブランドは、ザラ（ZARA）やギャップ（Gap）、マンゴ（Mango）、ユニクロ（Uniqlo）なども含まれている。

欧州ブランドへの配慮

その一方で、今回の法案では、「クラシック」なファストファッションと「超」ファストファッションを明確に区別された。ザラ、H&M、キアビ（Kiabi）など、欧州発の大手ブランドは、最も厳しい規制対象から外されており、国内ファッション業界の競争力維持も視野に入れた構成となっている。

これについて、フランス上院地域整備・持続可能な開発委員会の委員長、ジャン＝フランソワ・ロンジョ（Jean-François Longeot）は次のようにコメント。

「上院による明確化により、環境・社会・経済の現実を無視するプレイヤー、特にシーインやテムのような企業を的確に対象としつつ、欧州の既製服産業を不当に罰することなく対処できるようになりました。」

しかし、環境団体からは、法案の修正によって対象範囲が狭まり、規制の実効性が損なわれたとの批判があがる。

フレンズオブジアースフランス（Friends of the Earth France）のキャンペーンマネージャーであるピエール・コンダミーヌ（Pierre Condamine）は、ユーロニュースの取材に対し次のように語った。

「これは大きな機会を逃したと言わざるを得ません。規制の対象が2つのブランドに限定されており、フランス国内で流通している衣料品の少なくとも9割が除外されることになります。かつては、業界全体をより持続可能な方向へ導こうという強い意志が感じられましたが、現在では経済的保護が主目的となっているように見受けられます。誠に残念です。」

これに対し、保守系上院議員のシルヴィ・ヴァラント・ル・イル（Sylvie Valente Le Hir）は、現状では国内産業の保護が優先されるべきとの立場を示した。

「残念ながら、現在の状況においては、欧州の残された産業を守ることが最優先と考えております。中国の大手企業による生産規模は、私たちの100倍にも達しており、このままではフランスには何も残らなくなってしまう可能性があります。」