6月18日(現地時間)、イタリアのラグジュアリーブランド、マルニ(Marni)の親会社であるOTBグループは、フランチェスコ・リッソ(Francesco Risso)がクリエイティブディレクターを退任し、約10年にわたる在任期間を終えることを発表した。
リッソは2016年、創業者コンスエロ・カスティリオーニ(Consuelo Castiglioni)の後任としてマルニのクリエイティブディレクターに就任。当初はデザイナーとしての表舞台での経験が少なく、就任時には一部で懐疑的な声も上がったが、彼はその逆風を乗り越え、マルニに新たな創造性をもたらした。
彼のデザインは、ハンドクラフト感を前面に出した構築的なシルエット、大胆な色彩、そして感情に訴えるストーリーテリングが特徴だ。2024年春夏コレクションで登場した「2Dの花柄ドレス」や、2024年秋冬の「インテリア・ズー(Interior Zoo)」といったコンセプチュアルなテーマに象徴されるように、マキシマリズムを軸とした世界観を展開してきた。
また、彼はファッションを“ゲザムトクンストヴェルク(総合芸術)”ととらえ、ジャンルを超えたコラボレーションを積極的に実践。アートやカルチャーと有機的につながることで、ドレスがキャンバスとなり、キャンバスがドレスになるような、実験的で詩的な表現を追求してきた。
リッソは退任に際し、『Vogue Business』へ次のように語っている。
「マルニは、私にとってスタジオであり、舞台であり、夢でした。そこには色彩、本能、思いやりがあり、人々が自分らしくいられる場所でもありました。感情で築くということ、そして真のコラボレーションの持つ力を教えてくれました。」
また、OTB創業者であり会長のレンツォ・ロッソ(Renzo Rosso)は、リッソの貢献に対して次のようにコメントした。
「フランチェスコはマルニの精神と価値を深く理解し、チームと共にそれを新たな地平へと導きました。これは、マルニの新たで刺激的な章の土台を築いたという意味でもあります。フランチェスコは唯一無二のデザイナーであり、心からのアーティストです。これからの活躍を心から願っています。」
さらに、リッソ自身も「私を信じ、想像以上の旅路の最前列を与えてくれたことに感謝します」と、ロッソへの感謝の意を述べ、マルニのチーム全体にも感謝の言葉を贈っている。
1980年代にセーリングボートの上で生まれたというユニークなバックグラウンドを持つリッソは、16歳でフィレンツェのポリモーダ(Polimoda)に進学。その後、ニューヨークのファッション工科大学(Fashion Institute of Technology)、ロンドンのセントラル・セント・マーチンズ(Central Saint Martins)で学び、プラダ(Prada)では10年間にわたりウィメンズウェアを手がけた。
マルニの次期クリエイティブ・ディレクターについては、現時点で公式な発表はされていない。リッソの退任は、ブランドにとって大きな節目であり、今後の展開に注目が集まっている。
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