シーイン(SHEIN)、香港で非公開IPO申請へ─ 米英での上場断念を経て「三度目の挑戦」

SHEIN

6月27日(現地時間)、ウルトラ・ファストファッションのグローバル企業「シーイン(SHEIN)」が、香港証券取引所への新規株式公開(IPO)に向け、非公開でドラフト目論見書を提出する準備を進めていると、ロイター通信が複数の関係者の話として報じた。今回の動きは、米国および英国での上場計画が中国規制当局の承認を得られず失敗に終わった後の「三度目の挑戦」とされる。

関係者によれば、シーインは早ければ今週中にも香港取引所に申請を行う予定で、遅くとも週明けの月曜日までには提出される見通し。上場が認められれば、2025年に香港で実施されるIPOの中でも最大規模になる可能性が高い。

非公開申請という異例の手続き

今回の申請では、企業が目論見書を一般公開することなく、規制当局とのやりとりを非公開で進める「非公開申請(Confidential filing)」の形が取られている。米国市場では一般的な手法だが、香港では稀なケースであり、承認されれば、香港取引所が主要な上場ルールの一部を例外的に免除することになる。

香港の規則上、すでに米国などの海外証券取引所に上場している企業による「セカンダリー上場」の場合には非公開申請が認められているが、シーインのような新規申請者の場合は、個別の承認が必要となる。

中国の規制と2度の上場断念

シーインは、2023年末に米国でIPO申請を行ったが、中国証券監督管理委員会(CSRC)からの承認を得られず断念。その後、英国ロンドンでの上場も目指したが、こちらもCSRCの許可が下りず、計画は実現しなかったとロイターは伝えている。

中国企業が海外上場を行う際には、香港取引所への申請から3営業日以内にCSRCへ報告を行うことが義務付けられており、今回の香港での動きも、CSRCの承認が必要条件となる。現在、シーインがCSRCから口頭ベースでの承認を得ているかどうかは不明である。

なお、同社は、2022年に本社を中国からシンガポールに移しており、法人登記上は中国企業ではないが、製造の大部分を中国国内約7,000のサプライヤーに依存しているため、中国規制当局は「実質重視(substance over form)」の原則に基づき、同社を監督対象と見なしている。

関税・人権問題と向き合うグローバル企業

シーインは、トレンドのデザインを超低価格で販売していることから、若年層ユーザーから人気を集め、現在は世界約150カ国に展開している。その一方で、米中貿易摩擦の影響は大きく、米国が越境EC商品への関税免除措置を撤廃したことや、関税引き上げにより、最大市場である米国ビジネスが打撃を受けている。

また、同社のサプライチェーンについては、中国・新疆ウイグル自治区での強制労働との関係を指摘する声も根強く、国際的な懸念材料である。シーインはこれに対し、「米国向け製品には中国産コットンを使用しない」方針を明言しており、強制労働を禁止するサプライヤー行動規範を世界中に適用していると表明している。

IPO評価額とその変動可能性

ロイターによると、シーインは2023年のプレIPO資金調達ラウンドにおいて企業評価額が660億ドルに達していたが、その後の市場環境や関税の影響を受けて、IPO時点での評価額は見直しが入る可能性があるようだ。

IPO申請に含まれる目論見書には、同社のグローバルな供給網、規制対応、サステナビリティに関するリスクなどが詳細に記載される予定。ただし、これらの情報は、香港取引所でのヒアリングを通過するまでは一般に公開されない。

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